デジタルサイネージキーパーソンインタビュー 株式会社東急エージェンシー 寺園氏

2010-03-23 :, , , , , : DSI : 2,148 views

毎回デジタルサイネージ業界で先進的な取り組みをされている企業のキーパーソンにインタビューする「デジタルサイネージキーパーソンインタビュー」。第7 回である今回は、国内外のデジタルサイネージ事情に詳しい、東急エージェンシーの寺園さんにお話を聞いてきました。

DSI 東急エージェンシーさんの中でのデジタルサイネージの位置づけを教えていただけますでしょうか?

寺園さん 当社には広告会社としての立場と、東急電鉄のデジタル媒体を販売するレップとしての立場があります。広告会社としては、デジタルサイネージ媒体のセールスやデジタルサイネージを活用した事業開発などに取り組んでいます。デジタルサイネージ媒体の場合、他媒体に比べた値頃感や効果の問題もあって、マス媒体のプラスアルファとしてデジタルサイネージを提案するという事が多いのが現実ですね。

DSI 寺園さんはどういった形でデジタルサイネージに関わっていますか?

寺園さん 弊社の場合、クライアントに流通や消費財メーカーさんが多いという事や、東急グループに流通関連会社が多いこともあり、買場におけるお客様の心理に関するナレッジが豊富にあり、そのナレッジを集約して新しいものを生み出すという視点でプロジェクトチームが編成されました。その一つにデジタルサイネージのチームがあって、チームリーダーとして総勢10名で事業開発を行っております。他店さんではOOH局がメインになっていると思うのですが、私達は営業、インタラクティブ、OOH、マーケティング、クリエイティブといった色々な部署を横断してチーム編成をしています。それぞれの立場で、違う情報の得方や感性・感覚がありますので、それらを集めてプロジェクトとして発信していこうと考えています。

株式会社東急エージェンシー トータル・メディア・ソリューション本部 クロスメディアソリューション局 クロスメディアPR部 寺園さん

DSI デジタルサイネージに関して、東急エージェンシーさんはどの部分に力を入れていかれる予定ですが?
寺園さん 当社の収益として考えていくと、クライアントの広告宣伝として機能できる新しいメディアを作っていく事が大切になっていきます。ただ、その前に広告媒体としての価値付けが重要になってきます。例えば交通広告ではポスタースペースがあって「このスペースが幾らですよ」という事でビジネスが成り立っている部分はあるのですが、仮にサイネージにリプレースした場合はプラスアルファのお金も掛かってきます。費用対効果の面で二の足を踏んでいるお客さんもいらっしゃいますので、ロケーションオーナーが実際に使ってみて、価値あるものとして認識してもらい、視聴する生活者が集まることで、デジタルサイネージ媒体に出稿する意味が生まれるくると思います。媒体から考えるというより、「そこにいる生活者が何を考えているか」という事を基点として、お客様にとっての理想のインフォメーション端末を考えています。そして生活者が欲しい情報とともに伝える広告はあり得るのではと思っています。単にはテレビなどのあり素材を入れるだけでなく、サイネージならではの仕掛け方も当然出てきますね。

DSI いわゆるスペースブローカーではなく、生活者の視点に立ってデジタルサイネージならではの展開を考えているという事でしょうか?

寺園さん そうですね。ブランドコミュニケーションをしていくとき、プロダクトアウトの発想ではなく、マーケットインの視点で、買おうとしている人がどんな気分で商品を手に取るのか、そのストーリーというかコミュニケーションをデザインしてあげることが凄く重要な事だと考えています。「店頭をどう作るから」→「CMはこうなり」→「WEBはこうなる」といった、お客様の最終接点からリバースしてコミュニケーションを設計するという発想もありますね。ですから、サイネージを通過点として捉えるのではなくて、基点や着地点として、意識をどう転換させるか、どう価値付けするかが大切になってきます。その視点を元に、ハード、ソフト、クリエイティブはこんなものがいいよねという事を考えていくのが私達の仕事になってきます。そこで説得力のあるストーリーを考えていかないといけないですね。

DSII デジタルサイネージを考えた時に東急グループということがアドバンテージになるのでしょうか? また、面数展開や広告販売など状況を教えてください。

寺園さん 当然、東急沿線でどんな仕掛けができるという事をクライアントに提案する時に、プラスの価値になります。お客様との接点で考えたときに、四マス、PC、モバイルに加えて、交通広告としてのTOQビジョンは動画が流せる媒体としては他に変えられない存在なります。TOQビジョンを基点に発想するという事もありますね。

DSI 首都圏では電車内ビジョンが拡大していますが、クライアントにその効果も評価されているという事でしょうか。

寺園さん もちろん評価していただいていますが、正直なところ、クライアントの宣伝担当の皆さんが接触し始めたから効果を実感いただいているという事もありますね(笑) 担当の方が生活者として実体験のなかで「みんな見てる!」という事がスタートに繋がったという事ですね。ロジックとしては、閉鎖された空間の中である程度の時間に情報を入れるという事の効果がありますね。

DSI デジタルサイネージの課題などはありますでしょうか?
寺園さん もう少し面白い使い方ができたらいいなとは思っています。ジョッキ生が、日替わりのコミュニケーションをやっていますが、ああいったものも面白いですよね。コンテンツによって接触者は同じでも、深さが違ってきますね。単にテレビCMを流すのではなく、コミュニケーションの深さによって、購買などのフックになると考えています。

DSI デジタルサイネージの媒体に出稿されるクライアントの特徴はありますでしょうか?
寺園さん ひとつは広告宣伝費があるナショナルクライアントさんで、新しい媒体にトライしながら成果を検証した上で継続頂いています。あとは、交通広告によく出稿されているクライアントさんですね。英会話の事業者さんなどになります。

DSI アメリカのSeeSawネットワークが「ライフパターンマーケティング」という生活導線に合わせたデジタルサイネージのタッチポイントを繋ぐ展開をされていますが、日本でもそうした展開が可能だと思うのですが?

寺園さん 例えば電車内ビジョンと売場との連動といった事例はありますね。デジタルサイネージではないのですが、街との連動という意味で言うと、渋谷の街でエリアワンセグを使って携帯電話などのワンセグ機能付端末へ向けて、地域情報やイベント情報などを配信する実験を行っています。それ以外にも東京・渋谷の街にさまざまな情報を付与できるiPhone用サービス「pin@clip ピナクリ」の実証実験を、2009年12月1日に開始しています。

DSI 「pin@clip ピナクリ」は分かりやすく言うとどんなものでしょうか?
寺園さん 渋谷用のARを使ったiphoneアプリです。渋谷で働く人、訪れる人が自由に書き込みできる、インターネットの掲示板に街ナカでコミュニケーションできると言ったイメージでしょうか。
Twitterなどでも話題になったりしていますね。街ナカでiphoneをかざしていると、「何やってるんだろう」というノイズを生む起点になりますね。これは新しいコミュニケーション生む事で、渋谷の中での回遊性を高め、滞在時間を伸ばす事をテーマにした実験です。以前に自由が丘で行った「盛り上がりマップ」という街の口コミをデジタルサイネージ表示する実験でも、滞在時間の延長への効果を検証しています。

DSI ネットの普及で、「調べて、買って、帰る」といった行動様式が増えているという事でしょうか?
寺園さん 情報を自分達で選別して、欲しい情報しか入れないという傾向になっているかもしれませんね。プッシュしても跳ね返すみたいな(笑)そこに、いかにスムーズに情報を伝えて、プラスアルファでより楽しく見せる、見せ方ってなんだろうという検証の例が「熱の可視化」(盛り上がりマップ)だったり、情報をARのエアタグで見せる事に繋がります。

DSI 若い方は外に出なくなってという事でしょうか?
寺園さん そういう訳ではなくて、新入社員の面接をすると意外と「趣味は散歩です」という人が増えていたりするんですね。昔みたいにマスで流行る物とかはなくて、小さなコミュニティが沢山あって、その中でしか情報を得ないといった傾向があるのではないでしょうか。渋谷という街でどういいコミュニティが作れるかという事ですね。

寺園さん 単にサイネージがタッチポイントでスクロールできますよというだけではなくてサイネージが立ち止まった時にどんな訴求ができるのか、その人の行動がどう変えられるのかという事を考えていけばよりチャーミングなメディアになると思っています。

DSI 他社さんのデジタルサイネージ絡みの動きで気になる事はありますか。
寺園さん CVSでの取り組みはいい媒体として成立すると思います。徒歩数分圏内の生活導線上で、ネットワーク力を持っていることが強みですね。弊社では、メディアビジネスとしてではなく、コンシューマー視点でのクライアントビジネスも考えていきたいと思っています。

DSI メディア開発においても東急エージェンシーさんの中では生活者の視点という事が重要になってくるのでしょうか?
寺園さん そうですね。最終的にはメディア開発につながっていくとは思うのですが、何れにせよ、何百万人にリーチして、商品の売上に何%貢献するという明確な方程式は出しにくいのですよね。各メーカーさんが視聴者の測定で「何人が見ています」といった事をされていますが、点で見る測定だけでなく、生活者の購買のストーリーをベースにより立体的に見れた方がいいかもしれませんね。

DSI これからのデジタルサイネージのあり方についてはどうでしょうか?
寺園さん 商品を買うにはそれぞれ理由がありますよね。スーパーマーケットなどで単品だけ買うという事はまれで、「あれを買って、これを買って、だから次は・・・」といった繋がりの中でお買い物をしているわけですよね。その文脈に如何にのせていくかという事がポイントだと思います。サイネージで商品をどーんと出すだけでは少し弱いかもしれません。商品の事だけを伝えるのではなく、簡単に言うとレシピかもしれませんが、お買い物のストーリーの中にメーカーさんの商品をうまくまぎれ込ませていくかという事ですね。

DSI 海外のデジタルサイネージも色々ご覧になっていると思いますが、日本との違いはなんでしょうか?
寺園さん 向こうが進んでいるのは、クリエイティブの見せ方だと思っています。四マスのあり方も海外は違うのですが、ウォルマートの「スマートネットワーク」などはメディアとして欠かせないものになっていますね。静止画とちょっと違う、何か違和感を感じさせるデジタルサイネージ専用のコンテンツの作り方が洗練されています。LAのステープルセンター向かいのnokiaプラザでは十数面あるLEDビジョンで様々なスポンサーのCMが流されているのですが、センターと両サイドに大きなスクリーンがあって真中からコンテンツが見れるレイアウトになっています。ステープルセンターはスポーツ施設ですので
それに合ったコンテンツをそれぞれのスポンサーが作っていました。コンテンツの見せ方に関しては進んでいると思います。

DSI 日本ならではのデジタルサイネージの見せ方・作法に関してはどうお考えでしょうか?
寺園さん 電車の中ではJR東日本さんのトレインチャンネルの見せ方が一つの答えだと思いますが、他の場所ではそれぞれ違ってくるのではないでしょうか。今後デジタルサイネージの広告出稿が増えれば、クライアントもクリエイターもより考えて、コンテンツの作法が生まれてくると思います。

DSI デジタルサイネージに関する御社の方向性はどういったものでしょうか?
寺園さん 最終着地はメディア開発になります。そこに至る取り組み方として「消費者視点」でのサイネージのあり方を、ストーリー立ててクライアントに提案していくという事ですね。サイネージの事だけ語っても仕方がないですね。スーパーであれば、チラシがあり、店内POPがあって、PCもモバイルもあるわけですよね。それを全体からみて、コミュニケーションをリストラクチャリングした上で、サイネージの新しい価値を伝えていかなければと考えています。そこは、弊社ならではの提案ができるのではと思っています。インストアに関しては、店内のお買い物を変えるといった視点で考えていきたいですね。

育てていく
DSI デジタルサイネージはどんなメディアになっていくと思いますか?
行動の起点になりえるメディアだと思っています。それをみんなで、水をやり肥料をやっている過程にあると思います。なかでどんな実がなるのかわくわくしながら育てていく感じですね。どう育っていくか仮説は色々あると思います、今はどんなものになるか考える起点のタイミングではないかと思っています。

DSI 今日は長い時間ありがとうございました。

インタビュー終わり

簡単にまとめ

寺園さんのお話をお聞きして、一番印象的だったのはデジタルサイネージ単体で何かをするのではなくて、あくまでも生活者の視点に立って考えられている事でした。東急さんは流通系の企業もグループに多く「買場」に関する知見が多いように感じました。デジタルサイネージというメディアに関しては、育てていく過程にあると語られているのも印象的でした。私もワクワクしながら、どんな実がなって育っていくのか、これからもウォッチしていきたいと思います。

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コメント(5)

  1. ルイヴィトン ベルト コピー : 2014-06-13 19:55:23

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