デジタルサイネージキーパーソンインタビュー (株)博報堂 エンゲージメントビジネスユニット 戦略企画部長 辻氏

2010-05-28 : : DSI : 2,343 views

毎回デジタルサイネージ業界で先進的な取り組みをされている企業のキーパーソンにインタビューする「デジタルサイネージキーパーソンインタビュー」。第10回である今回は博報堂の辻さんにお話を聞いてきました。

DSI 御社におけるデジタルサイネージビジネスの位置づけを教えて頂けますでしょうか?

辻さん 弊社はマーケティングの会社で、コミュニケーションのストラテジーを作っていてくのがミッションです。それをする上で「統合マーケティング」という言葉を使っていまして、その中のタッチポイントの一つとして「モバイル」もあるし「デジタルサイネージ」もあるし、もちろんマスメディアもあるというという位置づけになります。デジタルサイネージをどうしようという主語はなくて、マーケティングを最適化する上で非常に重要なものとしてあるというスタンスになります。生活者がどういう情報が欲しくて、ニーズがどこにあるかを考えて、得意先の課題と照らし合わせて何をするかという事なんですね。

デジタル化がキーワード
キーワードは「デジタル化」だと思うんです。デジタル化が全てのものを変えていって、生活者の情報を取る行動も変わって来ているので、得意先のマーケティングの仕方も変わるし、メディアのあり方も変わってくるという事なんですね。結局、デジタルが今までのアナログと何が違うかと言うと、「結果が見えてくる」という事が大きな違いですね。ログが取れたり、結果が数字で見れたりする事によって得意先のマーケティングが変化していくという事なんですね。分かりやすく言うと、博報堂は昔、マスで一方的に伝えるだけでコミュニケーションが出来ていたのが、今は生活者主導社会の中で、情報はSNSなど含めより双方向のものになっています。トリプルスクリーンという言葉があるように、あらゆるタッチポイントのメディアがデジタル化していると言えます。私達はデジタル化されたメディアの一環としてデジタルサイネージを捉えています。

デジタルサイネージの社内プロジェクト

「デジタルサイネージプロジェクト」が社内にあります。2008年ごろから課題解決のためのプロジェクトメンバーが集まってスタートしています。パソコン、携帯以外のデジタルメディアが増えてくるなかで、JRさんのトレインチャンネルのように、今まで紙で入稿していたものがデジタルによる入稿になるという変化があります。デジタルメディアにおいてどういう表現で、お客様に何を伝えるのか、お客様はどういうものを見たいんだという事がテーマになっていくわけですね。その中でクリエイティブ、マーケティングも含めて、社内の知見をすり合せようという事でプロジェクトがスタートしました。ハード、MD連動、メディア化、新技術、効果測定、クリエイティブ、出資・提携チームと、全体をプロデュースするチームという8つのチームから成り立っています。得意先のマーケティングが変化する中で、課題に応えていくためにプロジェクトがあるわけです。

DSI そのプロジェクトチームは実際の案件に取り組んでいるのですか?

辻さん はい。色々なパターンがるのですが、それぞれにプロジェクトメンバーを付けて実際に取り組んでいます。テクノジーが先行して考えられてきたケースが多く、そこに生活者の利便性という視点が欠けていたケースもあったかと思います。テクノロジーが核になるのは当然ですが、お客様視点で付加価値を付けて良いものにするが我々の仕事になります。また、得意先からお金をもらうモデルなのか、お客様からお金をもらうモデルなのか、何れにしてもビジネスとして成立しないといけないわけですね。我々に相談が来るときはそうしたビジネスモデルを含めた相談が多いんですね。


デジタルサイネージに関わる4つのオーダー

辻さん 頂くオーダーとしては大きく4つに分けられます。一つは、従来の仕事の延長線上にあるメディアプランニングの中にデジタルサイネージを取り込む作業です。ここでは、マスを含めた全体戦略の中で提案を行っていきます。二つ目は機器メーカーさんからの依頼による、ロケーションや媒体の開発になります。弊社には「買物研究所」という組織があり、リテールの現場で生活者がどう動いているかという知見もありまので、そうしたものと掛け合わせて、設置場所の開拓やメディアの値付けなどを行っていきます。売り場における効果や販促にかけられる予算をベースに値付けなどのお手伝いをしていきます。またそうした企業からクリエイティブを依頼される事もありますし、そこから共同事業に発展するケースもあります。3つ目は流通事業者さんからの依頼になります。スーパーやコンビニ、専門店などの流通業におけるプロモーションのデジタル化です。この部分についてもメディア化や共同事業への取り組みが考えられます。4つ目は鉄道・交通関連からの依頼になります。ここではトレインチャンネルのようなインフォメーションもありますし、パスモやスイカといったものと連動する流れも考えられます。
「情報発信」、「販売促進」、「顧客管理」といった事がテーマになる事もあります。頂くご相談は様々ですが、プロジェクトチームでプランニングをして、課題解決に向けたお手伝いをしていく形になります。各々の事業者さまの強みと弊社のソリューション力、マーケティング力、生活者視点を組み合わせて取り組んでいます。博報堂は繋ぐ能力があると考えています。我々はマーケティングの会社で、デジタルサイネージの事業化をすすめる会社があった時に、そこをプロデュースする力がエージェンシーにはあると考えています。また、そこで大事になってくるのが効果測定です。効果がある形にしなければメディアとしても成り立たないので、効果が上がらなければその理由を検証して、PDCAを回していく事が我々の付加価値だと考えています。

DSI 当たり前の事かもしれませんが、マーケティングや生活者の視点がデジタルサイネージよりプライオリティが高いという事ですね

辻さん マーケティングコミュニケーションの会社ですから。昨年のデジタルサイネージプレアワードで賞を頂いた、大阪道頓堀の「トンボリステーション」で実施したインタラクティブなデジタルサイネージの事例があります。そこでは、しくみデザインさんのテクノロジーとクリエイティブ、そこにメディアを掛け合わせることによってお客様の課題解決に向けたソリューション提供を行っているという事になります。あらゆるメディアがデジタル化する中でデジタルサイネージは非常に重要なタッチポイントだと考えています。

統合マーケティングソリューション
DSI どのような成長戦略を持って取り組んでいますか?

辻さん 博報堂は得意先のバリューチェーン全部に対して、商品開発なども含めて取り組み「統合マーケティングソリューション」を提供することが使命です。そのコアにあるのがエンゲージメントリングです。弊社はとにかく生活者発想であり、現在は生活者主導社会であるという捉え方をしています。そうした時代に生活者の心を捉えるには、生活者の側に立って、絆(エンゲージメント)を作らなければなならいと考えています。

DSI そのエンゲージメントリングにどのようにデジタルサイネージは関わっていくのでしょうか?

辻さん エンゲージメントリングの中心には「心が動く」があり、その周りに「選択する」「共有する」「絆を感じる」があります。単純な左から右へのコミュニケーションではなくて、「心が動く」という発火点があり、「選択する」という輪が回る場合もあるし、「共有する」という輪が先に回る場合もある。それらがグルグル回って、口コミがあり、ブログがあり、SNSがある中で、生活者主導社会が成立している、情報設計が重要になります。私たちのプロジェクトで語るデジタルサイネージの位置づけとしては、「心の窓が開いた時にアプローチできるメディア」だと考えています。テレビはリビングで見るメディアですよね。デジタルサイネージについては、街を歩いている時にきっかけになるメディア、「心を動かすスイッチ」になると言えます。認知している情報がリマインドされる、「きっかけになるメディア」だと考えています。もう一つは、販売と連携した計測可能なデジタルメディアとして力を入れています。例えば、メーカーさんが持ちこみの電子ポップが、どんなクリエイティブで効いているのか、モバイルと連動させるとどうなるか、顧客データと連動させるとどうなるか、といったところが弊社が一番取り組んでいるところですね。

DSI そうした位置づけや取り組みの中で、デジタルサイネージに関する成果はどんなものがありますか?

辻さん ひとつはトレインチャンネルをはじめとする様々ななどのデジタルサイネージメディアの売上があります。先ほどの4つの流れの中で、コンサルティングという形であったり、クリエイティブという形であったり、プロジェクトフィーという形であったり、効果測定といったものが弊社としてはビジネスになっています。


DSI デジタルサイネージ関するクライアントの反応はどうでしょうか?

辻さん デジタルサイネージはその効果測定が確立されたものではありません。ただ、得意先からはより流通の52週と連動させた販売促進のデジタル化はニーズとして存在します。デジタル化によって結果が見えるメディアに関するニーズは高いので、その課題解決に博報堂は貢献したいと考えています。そうした意味で責任をとれる広告代理店、ビジネスパートナーになっていきたいという事です。統合マーケティングのコンセプトに基づいて情報設計するなかで、街中での気づきもあれば、店頭での気づきもあるわけですね。

DSI 今後の目標などはありますでしょうか?

辻さん 時代の変化のスピードは更に高まります。テクノロジーは更に進んでいくだろうし、効果測定の方法の進歩や、また、生活者の変化もあると思います。今、取り組んでいる活動の延長線上に博報堂のビジネスがあって、その中にデジタルサイネージもあると考えています。時代に合わせたコミュニケーション設計を進化させていく事が基本だと思っています。そこでキーになるのがデジタルであり、テクノロジーであり、プラットフォーム発想であるわけですね。効果に責任を持てる広告代理店の取り組みのひとつに、デジタルサイネージがあるのではないでしょうか。それが得意先とのビジネスパートナーとしての関係に繋がっていきます。

DSI 目標や問題解決に対する取り組みとしはどんなものがありますか?

辻さん テクノロジーが分かって、クリエイティブが分かって、事業が分かる人間を如何に育てていくかという事だと考えています。統合マーケティングソリューションを出来るプロデューサーを育てていくことです。

DSI 今度の展開の中でデジタルサイネージのアド・ネットワーク化というものもありますでしょうか?

辻さん テクノロジーが更に進化し、各媒体社さんの面数が更に増えて、価格と広告主のニーズが合致すれば、今後は伸びていくのではないでしょうか。


DSI システム、指標、コンテンツの標準化に関してはいかがでしょうか?

標準化が進めばメディアとして育っていく可能性がありますし、そのためにもデジタルサイネージコンソーシアムに加盟しています。 広告指標の標準化については、弊社でも試行錯誤しながら取り組んでいるという過程です。何の目的のための効果指標なのかをよく考えていかなければなりませんね。

DSI 統合マーケティングの視点の中で、デジタルサイネージに取り組んでいるという事はよく分かりました。最後に、デジタルサイネージに関する御社のメッセージがあれば教えてください。

辻さん デジタル化が進む中で、生活者が変化して、得意先のマーケティングが変わってきています。先ほどもお伝えしたように、コミュニケーション設計をする上で、デジタルサイネージは「心の窓が開いた時にアプローチできるメディア」としてあると考えています。弊社の統合マーケティングの中でも重要なタッチポイントになっていきますので、積極的に取り組んでいく予定です。

DSI 本日はありがとうございました。
(インタビュー終了)

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