日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
中国最大手デジタルサイネージ運営会社フォーカス・メディア・ホールディング社(分衆伝媒)が、インターネット広告事業、映画館向けの広告ネットワーク事業などを除き、その急成長の基盤となったビルや店舗向けのデジタルサイネージ事業を売却することになりました。買主は、中国の大手ポータル運営会社SINA Corporation(新浪)であり、2009年第2四半期末までに売却が完了する予定です。
2008年12月22日の発表によれば、SINA Corporation社が買収する事業は、2008年第3四半期のフォーカス・メディア・ホールディング社の業績において、売上高224.8百万米ドルの52%、粗利益109.7百万米ドルの73%を稼ぎ出している部門です。シーナ・コーポレーション社は、買収代金として4,700万株の自社の新株をフォーカス・メディア・ホールディング社に割り当て、それらの株式は既存のフォーカス・メディア・ホールディング社の株主に分配される予定です。この買収が発表された時点では、シーナ・コーポレーション社の株価から、13.7億米ドルの買収価値と算出されましたが、この発表直後からシーナ・コーポレーション社の株価は下がり続け、12月24日終値では10.8億米ドルまで下落しています。株式市場は、この買収をネガティブに見ていると言えます。
フォーカス・メディア・ホールディング社のCEOのTan Zhi氏はSINAのコンテンツの強さとデジタルサイネージの機能を活用する事により、合併後は事業のシナジーによりお客様により良いサービスを提供し、中国のメディア産業で競争力を持つと語っています。しかし、フォーカス・メディア・ホールディング社の91都市に展開する120,131枚(2008年第3四半期末現在、自社保有分は114,300枚)のLCDは、ネットワークで繋がっておらず、コンテンツの一括配信・管理は出来ない状態です。シーナ・コーポレーション社が、このネットワークにどんな価値を見出しているのは不明です。
しかし、世界的規模の不況の底が見えない現在、もう少し時間をかけて検討する選択肢もあったはずです。仮に、シーナ・コーポレーション社がデューデリジェンスを十分に行わず、この買収を急いだとしたら、その要因になったのは、Bloomberg.comの記事でも指摘された他の買収者の存在があります。
Sina Corp., operator of China’s biggest Web portal, may buy part of Focus Media Holding Ltd. for about $1 billion to expand into non-Internet advertising, four people familiar with the matter said
2008年12月19日、Google Incがフォーカス・メディア・ホールディング社を買収するという噂が流れ、株価は19%上昇しました。また、Google Incの前には、フォーカス・メディア・ホールディング社は、Microsoft Corporationと買収に関する話合いを持ったと言われています。シーナ・コーポレーション社にとって、資金力のある競争会社に勝つため、即断即決が求められたとも考えられます。
11月12日にシーナ・コーポレーション社は、2008年第3四半期売上高は、前年同期比64%増の105.4百万米ドル、同純利益が、前年同期比28%増の22百万米ドルと発表しました。しかし、北京オリンピック終了後、経営環境は悪化しており、同日にシーナ・コーポレーション社は、第4四半期の売上高が98~101百万米ドルのレンジになると発表しており、2009年は更なる落ち込みが予想されており、新たな収益基盤としてフォーカス・メディア・ホールディング社の事業獲得は最重要課題でしょう。(98百万米ドルの場合は前年同期比7%減)
一方、フォーカス・メディア・ホールディング社は、11月10日に2008年第3四半期売上高は、前年同期比63.7%増の224.8百万米ドル、同純利益が、前年同期比10%増の51.4百万米ドルと発表しました。しかし、こちらは、シーナ・コーポレーション社以上に財務状況が悪化する可能性があります。
その根拠は、2008年4月10日、フォーカス・メディア・ホールディング社は、その子会社が行っていた個人情報を無断で利用してきたテキストメッセージ広告事業を見直し、売上計画も、従来の900~930百万米ドルのレンジから860~890百万米ドルのレンジへ下方修正したことです。この事件が及ぼした影響は、業績だけで留まらず、フォーカス・メディア・ホールディング社に対する広告主と消費者の信頼を損ない、株価は大きく下がり、創業者兼CEOの江南春氏も事業拡大の意欲を喪失したと言われています。身売りせざるを得ない理由があるのです。
北京でもガソリンスタンドに車列!!中国人の個人情報意識に火を点けたケータイ・ダイレクト・メール
(北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地より一部引用)
前年比64%を売上げる急成長中の企業が成長の要であるはずの事業を売却する、一見意外に見える展開ですが、矢継ぎ早の買収による急成長の足元は意外に脆いようで、買収後は円滑ではなく、システム統合がうまくいかない等のトラブル続きの様子です。コンテンツ、インフラ、すべてを包括したソリューション提供が求められるこの分野で、企業の核となる強み(いわゆるコアコンピタンス)が追い付けないほどのスピードでの成長が今回の売却を生んだと言えます。
フォーカスメディア社のCEO,Tan Zhi氏が語るようにこの売却が幸福なマリアージュとなるか今後の状況を注目して見ていきたいところです。
世界中の地下鉄、バス、空港などのデジタルサイネージ・ネットワークを使ったフィルム・フェスティバルが開催されます。
来年5月に開催される Art By Chance はアメリカ、カナダ、トルコ、オランダ、ドイツの 15都市で同時開催され、通勤客などに 30秒間のサイレント・ムービーによるアートを提供します。
現在作品を募集中で、応募期限は 2009年3月20日です。30秒間の無音のムービーで、広告やプロモーション以外のコンテンツであれば応募できます。
今年9月にもトロントでデジタルサイネージ・ネットワークを使った映画祭が開催されていますが、日本はまだ参加できる状況にないのが残念ですね。
デジタルサイネージが受け入れられるためには、広告だけではなくアートイベントでの活用など市民にエンターテインメントを提供するような仕掛けも有効だと思います。
Organisers of the Art By Chance festival, scheduled to take place in May in 15 cities across the U.S., Canada, Turkey, the Netherlands and Germany, say it “will present urban dwellers with stimulating content, thus colouring the time slices that are usually considered dead”.
トルコ全土の 11県に 42店舗を展開し、年間 2,800万人の買い物客を迎えるデパート大手の Boyner は、年内に 20店舗にデジタルサイネージを導入します。
導入第1号はアンカラの Panora Shopping Center で、フィリップス製の 42インチ液晶ディスプレイ64枚を連ねたビデオウォールです。
デジタルサイネージはショッピングモールの標準設備になってきた感がありますね。
Boyner, a leading department store with 42 stores and eight discount stores in 11 different provinces all over Turkey has selected TVeez Marketing Intelligence solution in its stores. The implementation is planned for 20 stores by the end of the year.
インドでは驚くべきスピードでデジタルサイネージの導入が進んでいます。インド全土に 5,000台のディスプレイを設置する OOH Media 社はレストランのデジタルサイネージネットワークの展開を進めます。
レストランチェーン Blue Foods の店舗にモニター 100台を設置するもので、ムンバイやバンガロール、デリなど外食率の高い都市を網羅しています。これにより、OOH Media 社のレストランネットワークは 560スクリーンに拡大されます。
コンテンツは 12分間のループで構成され、8分間は広告を流し、4分間はミュージックビデオ、ムービープロモーション、コンテストなどのコンテンツを流します。
The deal will bring OOH Media’s restaurant estate to some 560 screens. In total the company has more than 5000 displays across a range of venue types.
(OOH Media adds sites in India’s top restaurant cities より、一部引用)
顔認識技術による視聴者測定技術の大手 TruMedia とサムスンが提携し、サムスンのパネル PC 一体型デジタルサイネージモニターの Xn シリーズに TruMedia の iCapture システムが組み込まれて販売されることになりました。
サムスンの Xn シリーズは WAN コネクションを備えインターネットにそのまま接続できるほか RS-232C インターフェイスを備え、25台までのデジタルサイネージネットワークが構築できる MagicInfo Player もプリインストールされています。
この提携により、サムスンの MagicInfo Player を使って視聴者の人数や性別などの情報によるコンテンツの切り替えが可能になります。
TruMedia Technologies, a provider of real-time audience measurement and proactive advertising solutions, announced the signing of a partnership agreement with Samsung Electronics Corp., a supplier of professional LCD and PDP display products.
(Hardware | Samsung integrates TruMedia audience measurement into MagicInfo Player より、一部引用)
以前にも TruMedia の視聴者測定カメラを組み込んだディスプレイについて紹介しましたが、今回はトップサプライヤー同士のなかなか強力な組み合わせですね。TruMedia は先日廉価版の顔認識ソリューションを発売しており、普及拡大に力を入れているようです。
米デジタルサイネージソリューション大手の EnQii 社は、アジア地域の顧客向けに Zoom Digital 社の視聴者測定ソリューションを提供します。
顔認識技術と位置計測技術を組み合わせたもので、視聴率、視聴時間、移動経路などの測定ができるようです。
また、OVAB の視聴率基準にも準拠しているそうです。
Zoom Digital is to provide metrics and analysis services for users of the EnQii digital-signage platform across Asia.
(EnQii enlists Zoom for Asian metrics より、一部引用)
世界でもデジタルサイネージの成功事例が最も多いと思われる中国ですが、北京には名実共に世界最先端の事例があります。
この Xicui エンタテイメント・コンプレックス・ビルでは、道路に面した壁面が丸ごと LED パネルとなっています。その面積は 2,200平方メートル。「Greenpix Zero Energy Media(グリーンピクス・ゼロエナジー・メディア)」と名付けられたこの巨大なデジタルサイネージは、その名の通り消費電力ゼロで動作するメディアウォールとなっています。
驚くべきことに、このシステムはすべてソーラーパワーで動いており、パネルのガラス自体に組み込まれた太陽電池が昼間の太陽光を電力として蓄え、そのエネルギーを使って夜間に映像を映し出す仕組みを実現しています。
世界トップクラスの建築とエンジニアリングの専門家が集まって設計したこの建物は、デジタルサイネージの事例としてだけでなく、建築業界や太陽電池業界など多方面からの注目を集めています。
こうした最先端のプロジェクトを進める場合、ニューヨークでは「この技術にはすでに実績があるのか?」と聞かれるのに対し、中国では逆に「間違いなく世界で初めての試みか?」と確認されるそうで、この国には新しいものに挑戦したいというメンタリティが顕著なのだそうです。
オリンピックのおかげもありますが、中国の勢いには圧倒されますね。