日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
デジタルサイネージプロデューサーの喜多村です。
ここ数日、3月11日大震災の発生に伴って停止された東日本のDサイネージネットワークをどのように再開するべきか、業界内で活発な議論が交わされています。
特に、福島原発の事故を遠因とする電力需給の逼迫が難しい問いを投げかけています。
ここでは、電力とDサイネージの関係に焦点を絞って議論を掲載します。
節電するべき時間帯がある
節電が必要なのは、電力の消費が供給量を超えると予測できない停電が起きるからであり、
需要が下がっている時に節電をしても効果があまりありません。
よって、Dサイネージはまず、ピーク時間帯を避けて点灯再開出来れば理想的です。
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(エネルギー白書より転載 電力消費ピーク日における一日のロード・カーブ(電力消費推移))
上画は観難くて申し訳ないのですが、真夏の一日における電力消費の推移を表しています。
上図は海外のものですが、夏と冬のピーク時間帯の違いを表す概念図です。
冬は帰宅時の暖房と照明によって17時から20時ごろピークとなります。
出社時の朝方も少し上がります。どちらも冷えている部屋を暖めたい時間帯です。
夏であれば朝の10時から19時あたりまで長く節電が必要そうです。
Dサイネージを点灯したい時間帯にピークが来ている点が悩ましいですが、
「とりあえずオフピーク運転」という再開方法は、
比較的理解を得やすいのではないでしょうか。
情報が安定して流れてこないが
前述の運用方法も、公表される計画停電や電力消費のピーク予測に関する情報が正確ではないかリアルタイムではないという現実があり、対応を難しくしています。Twitterにて以下のような情報発信が東京電力から行われていますが、節電運用の参考とするには全然足りません。
東京電力株式会社 公式Twitter
http://twitter.com/#!/officialtepco
逆に言えば、電力に関する情報が安定して発表されるようになってきたら再開する、という考え方もあるでしょう。いつになるのか誰にも判りません。
省電力設定をディスプレイに施すのは余り効果的ではないらしい
ディスプレイメーカの方からのご指摘では、コンテンツの差し替えやディスプレイの輝度を下げることは実質的な省電力効果が殆ど期待できないとのこと。
福島第一原発の安定には五年はかかる?
まだ予断を許しませんが、福島第一原発は再臨界による格納容器崩壊、高濃度放射性物質の漏出という最悪のシナリオが遠のきつつあるとのこと。そこで当然、「このまま福島原発が収まったらDサイネージを再開しよう」というご意見もあろうかと思います。では、いつ収まるのか。
建屋上部が崩壊した1号機、3号機、半壊の4号機は燃料抜き取り等に必要なクレーン設備が破壊されたと思われます。屋根もないプールの中に使用済み燃料が収まったまま、抜き取りも出来ずに戦々恐々としながら冷えるのを待たなくてはいけません。何もしないと台風の時期も次の地震もあのままとのこと。福島第一原発が安全だと宣言できるのは6年後ではないか、という意見もあります。
つまり福島第一原発の問題が完全に収まる前に、日常に戻らなければいけません。
電力の消費により理解の得られる運用とコンテンツを考え、前向きに進む決断が必要です。
以下のムービーの45分ぐらいから、福島原発の今後について大前研一氏が解説しています。
地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後(大前研一ライブ579)
無停電電源装置で点灯し続けるのは無理だが
ピーク時間帯をUPSのバッテリーで稼働させられるかなと考えました。
端末側の消費電力
60型ディスプレイ 1面 400w
PC 250w
ネットワークと周辺機器 50w
最大これぐらいのものでしょうか?
700Wを力率0.6(ぐらいですよね?)で割ると約1160VA。
これを1時間稼働させるUPSを調べましたが高すぎ、大きすぎます。
UPSで平時と同等の運営をするのは不可能ではありませんが難しい。
ただ、災害情報を提供するDサイネージとしてUPS搭載は意味があります。
私も、UPSが停電を感知したら画面が緊急避難経路に切り替わったり非常電灯になるDサイネージを機能設計したところ、コンペでとてもほめられました。東北でも今回大停電が起き、商業施設内から逃げる方の中には混乱がありましたね。
(結局、弊社案は他の理由で採用されませんでした。。。今なら実施されたかもしれない。)
700wの端末が1000カ所あれば700kwです。結構な消費量です。
Flashより動画の方が消費電力が少ない場合がある
コンテンツの差し替えで省電力は見込めない、という話をしました。その通りだと思います。
ですから、あまり以下は気にしなくても構わないマメ知識です。
Flashはある程度CPUのパワーに依存する代わりに高い互換性を持っている再生技術です。
逆に動画ファイル再生の場合、今時のPCやSTBはグラフィックプロセッサが再生を処理し、微差ですが、同等の解像度のFlashより消費電力が少なくなる場合があります。個々では無視できる差ですが、気は心、ということもあろうかと。
※追記1 2011年3月22日 10:24
以下の2サイトがオープンされ、電力に関する情報が入手しやすくなりました。
東京電力 「電力の使用状況グラフ(当社サービスエリア内)」
http://www.tepco.co.jp/forecast/index-j.html
Yahoo! Japan 「東京電力、東北電力管轄の地域の方へ 効果的な節電と停電の対処方法をご案内します」
http://setsuden.yahoo.co.jp/
※追記2 2011年3月22日 12:22
Twitter諸氏曰く「震災直後にPCを消灯してオフィスサイネージを活用したためエネルギー効率が高くなった」という事例があったとのこと。サイネージが節電に役立つなんてすばらしい。
※この記事は喜多村個人の意見に基づいて記述されており、
所属している企業、団体及びデジタルサイネージ総研様の見解とは異なる場合があります。
この記事についてのご意見、情報、問い合わせのある方は、
喜多村(macorinu@gmail.com)までご連絡をお待ちしております。
世界でもデジタルサイネージの成功事例が最も多いと思われる中国ですが、北京には名実共に世界最先端の事例があります。
この Xicui エンタテイメント・コンプレックス・ビルでは、道路に面した壁面が丸ごと LED パネルとなっています。その面積は 2,200平方メートル。「Greenpix Zero Energy Media(グリーンピクス・ゼロエナジー・メディア)」と名付けられたこの巨大なデジタルサイネージは、その名の通り消費電力ゼロで動作するメディアウォールとなっています。
驚くべきことに、このシステムはすべてソーラーパワーで動いており、パネルのガラス自体に組み込まれた太陽電池が昼間の太陽光を電力として蓄え、そのエネルギーを使って夜間に映像を映し出す仕組みを実現しています。
世界トップクラスの建築とエンジニアリングの専門家が集まって設計したこの建物は、デジタルサイネージの事例としてだけでなく、建築業界や太陽電池業界など多方面からの注目を集めています。
こうした最先端のプロジェクトを進める場合、ニューヨークでは「この技術にはすでに実績があるのか?」と聞かれるのに対し、中国では逆に「間違いなく世界で初めての試みか?」と確認されるそうで、この国には新しいものに挑戦したいというメンタリティが顕著なのだそうです。
オリンピックのおかげもありますが、中国の勢いには圧倒されますね。
オーストラリアに拠点を置く Prime Digital Media (PDM) は、二酸化炭素を排出しない「カーボン・フリー」なデジタルサイネージ広告の提供を始めました。
PDM では Carbon Planet という専門機関の監査のもと二酸化炭素排出枠の購入を行うもので、これにより広告主は特別な手続きを取ることなくカーボン・フリー(カーボン・ニュートラル)な広告を実施できるとのこと。
欧米ではすでに一般消費者の間でも地球環境への意識が高く「グリーンな」イメージ自体が企業の宣伝にもなることから、このような動きは今後も強まってくるのではないかと思います。
デジタルサイネージの分野では、アメリカやヨーロッパ以外でもカナダやオーストラリアといった国に先進的なビジネスを展開する中小企業が多いのが目立ちますね。
Australia’s leading provider of Out-Of-Home Digital media, PDM, has announced they will now offer carbon neutral advertising to their clients. PDM is the first Australian Out-of-Home Digital media company to provide advertisers with a choice to purchase fully carbon offset advertising as part of their environmental responsibility.
(PDM announce carbon neutral advertising for their digital signage network より、一部引用)
8月27、28日の2日間、東京国際フォーラムで行われた「シャープ電子デバイス展 2008」で、「液晶のシャープ」が先端技術を駆使した面白い液晶ディスプレイ技術を発表しました。
画面にスキャナー機能を搭載した「システム液晶」など、ほかにも面白い技術がいろいろある中で、デジタルサイネージ的に注目したいのはやはり「カラーメモリー性液晶」です。
エコロジーの重要性が高まる中、デジタルサイネージ・ディスプレイにも低消費電力が求められており、電子ペーパーなどの新しい技術が注目を集めています。
今回シャープが発表した「カラーメモリー性液晶」は、RGB のそれぞれの色のみを反射する3層の液晶を重ねることで、カラーフィルターを用いた従来のカラー電子ペーパーに比べて2倍の高彩度を実現しました。また通常の透過型液晶とは異なり、バックライトが不要の反射型であるため、画面を書き換えるとき以外には全く電力を消費しません。
さらに反射型の特徴として、明るいところではっきりと見えるため、日中の屋外のような非常に明るい環境でも視認性が確保できるものと思われます。
消費電力と屋外での視認性という、デジタルサイネージ・ディスプレイの課題を2つともクリアできる可能性があり、非常に期待の持てる面白い技術だと思います。残念ながら写真は掲載できませんが、かなりはっきりした明るい画面です。意外と電子ペーパーよりも先に実用化されるかも知れませんね。
カナダの「グリーン・アド・ネットワーク」はユニークなデジタルサイネージを展開しています。
モノとしては液晶やプラズマのパネルを使った通常のデジタルサイネージ・ネットワークなのですが、「環境に優しいこと」をウリにしており、鉛ゼロ、水銀ゼロのディスプレイを使用しているのはもちろんのこと、広告収益の1%を環境保護団体に寄付したりニューズレターを発行するなど、「エコ・フレンドリー」なイメージをアピールしたい企業や団体からの広告を獲得しようとしているようです。北米では「グリーンであること」が企業にとって非常に重要視されるようになってきており、今後こうしたアプローチは増えてくるのではないかと見られています。
またグリーン・アド・ネットワークでは、地域密着型のアプローチで地元の中小企業との関係を重視しており、商工会議所を始め地元のレストランや商店、ショッピングモールなどに広告やニュースなどのコンテンツを提供していく計画です。
デジタルサイネージ・ネットワークはどれも似たようなものになってしまう可能性があるので、独自の特色を打ち出して差別化を図っていく必要があるかも知れませんね。
The cutting-edge eco-friendly network was launched as a means to maximize community involvement while setting a foundation for a low-cost, yet highly effective marketing vehicle for small to medium sized businesses in the local community. In addition to fresh community news and targeted third-party advertising, the GREEN Ad Network will also inform viewers of weather updates, latest news, sport scores and a variety of other up-to-the-minute news (infotainment) while viewers wait for service at various local businesses. Furthermore, as the name illustrates the GREEN Ad Network is definitely a push towards an environmentally friendlier approach to marketing as all content and creative is produced digitally, delivered digitally and displayed digitally. DDS has also opted to use LCD and/or eco-friendly (100% lead & mercury free) Plasma display panels as they tend to consume less energy and/or are more environmentally friendly than other alternatives. To maintain a strong commitment to a healthier environment, DDS will publish a monthly newsletter targeting local businesses titled “12 tips to go green” and donate a percentage of all ad sales to organizations such as Tree Canada (www.treecanada.org).
デジタルサイネージにとっても「エコ」は重要なキーワードです。
紙のポスターを減らせば森林資源を節約できますが、代わりに電気を消費するため、トータルで見るとどっちがエコなのか?という議論はあるでしょう(イギリスでの調査結果)。将来的には電子ペーパーのようなほとんど電力を消費しない形のデジタルサイネージが広まっていくに違いありません。
駅中での電子ペーパーの実証実験は 2005年頃から行われています(日立製作所の電子ペーパーを使用)が、今回の実証試験では、ブリヂストンが開発したカラーとモノクロのA3サイズの電子ペーパーを使用します。電子ペーパーにはいくつかの方式がありますが、ブリジストンのものは独自開発の電子粉流体方式です。配信には携帯の高速通信網を使用しています。
毎日新聞社とブリヂストンは19日、省エネで環境に優しい電子ペーパーを使ってニュースと広告掲示を行う新たな電子屋外広告(デジタルサイネージ)の共同実証試験を始めた。東京都交通局の協力を得て、都営浅草線の新橋駅構内と、都営新宿線の新宿三丁目駅コンコースの2カ所に設置。09年3月末までの間、広告視認効果などのデータを蓄積し、新たな広告媒体としての可能性を探る。
(電子屋外広告:共同実証試験始める ブリヂストンと毎日 - 毎日jp(毎日新聞) より、一部引用)
デジタルサイネージに期待される事柄のひとつとして、エコロジーという側面があります。広告に費やされる紙資源の大部分はわずかな期間で廃棄されており、その無駄が指摘されています。書籍が何十年も捨てられることなく利用されるのに比べて、ポスターやチラシ、DM などは手渡されるそばから捨てられていきます。
ポスターやキャンペーン広告、様々な告知などをデジタルサイネージで行うようにすれば、短期間で捨てられる紙の使用量を減らして資源を節約できるだけでなく、印刷に使われるインク、配送のための時間とエネルギー、廃棄にかかる費用などもなくすことができます。これらの節約効果は、デジタルサイネージの設置や運用のためのコストを大きく上回るものと思われます。
ある英国企業の調査によれば、デジタルサイネージによって実際に資源を節約できることが確認できたということです。また、11億ポンドに及ぶイギリスのポイント・オブ・セールス広告費のうち 50%は廃棄されており、より環境に優しい店頭プロモーションに対する消費者からの要求が強まっているとのことです。
デジタルサイネージの利用は、企業の「グリーンな」イメージの創出にも役立つかも知れません。
Stephen Henley, managing director of Bristol-based Henley & Henley, claimed that tests had proven that the screens reduced waste paper.
“We now know that the use of wireless media offers advertisers a cost-effective way of delivering campaigns with minimal wastage,” he said.
Sean Keenan, managing director of Comtech M2M, which creates electronic in-store advertising, added that the drive for companies to be more eco-aware is coming from consumers.
“With over 50 per cent of the £1.1bn spent on the UK’s point of sale being wasted, retailers are facing increased demands from consumers to deliver environmentally-friendly in-store promotions,” he said.
(Electronic advertising ‘greener’ than paper - vnunet.com より、一部引用)