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業界のキーパーソンにお話を聞く「デジタルサイネージキーパーソンインタビュー」7回目の今回は日本のデジタルサイネージにおいて成功事例として語られる事の多い「トレインチャンネル」を運用する株式会社ジェイアール東日本企画(以下jeki)の山本さんに、現在の取り組みと、今後の方向性についてお話を聞いてきました。
JRグループでのjekiの役割とトレインチャンネル
DSI JRグループにおける、jekiさんの立場と、デジタルサイネージの位置づけを教えてください。
山本さん JRグループの中で広告を管理・運用をしている唯一の会社がjekiです。jekiには二つの側面があって、一つはJR東日本グループの広告代理店という役割、もうひとつはJR東日本の媒体を預かって広告を販売、運営する媒体社の役割になります。最近特に話題になるのはJR東日本でのデジタルサイネージ事業なのですが、ゆりかもめ、つくばエクスプレス、りんかい線の媒体も管理・運営させて頂いています。弊社としては、交通広告のデジタル化という大きなトレンドがあって、それがたまたま、デジタルサイネージというトレンドと合致しているに過ぎないと考えています。デジタルサイネージという言葉は2006年ごろから業界で使われ始めたのですが、トレインチャンネル自体は2002年からスタートしています。その当時は車内映像モニターという呼び方をしていましたね。
DSI 媒体社としての役割はどんなものですか?
山本さん 私どもの契約代理店が160社程あるのですが、そこへの広告の販売という形になりますね。
DSI よく聞かれるのですが、トレインチャンネルのディスプレイはjekiさんの所有物になるんですか?
山本さん JRになります。通常、駅にあるポスターやコルトン看板はjekiの資産なんですが、車両の中はJRの資産です。そこに送り込むサーバーや通信インフラはjekiの設備になります。
DSI jekiさんの売り上げの中でデジタルサイネージはどれぐらいの規模になりますか?
山本さん 広告全体の売り上げの8%程度ですので、金額的にはまだまだ小さいですね。従来からある、中吊りや窓上など弊社が取り扱う広告の中の1ユニットという位置づけになります。ただ、広告市場の冷え込みによって他のユニットが15%~20%減するなか、トレインチャンネルは落ちていないんですよ。そういう意味ではクライアントからの評価が高いユニットになりますね。
トレインチャンネルの現状
DSI トレインチャンネルはデジタルサイネージの成功事例として語られる事が多いですが、現状についてもう少し教えて頂けますか?
山本さん 現在、ディスプレイの面数としては16000面程度になります。国内で1万面以上のサイネージの媒体が少ない中で、規模があるという事と、広告媒体として高い稼働率があるという事で業界の中では注目されています。
DSI 広告の入稿状況はいかがでしょうか?
山本さん ほぼ満稿という状態ですね。一昨年頃までは、半年先までいっぱいという状況でした。昨年頃からは、ほぼ満稿という状態で、ずっと先まで埋まっているという程ではないですね。昨対比で言うと微増という状況です。なぜかというと、2008年12月から京浜東北線の面数を増やしていて、2010年の2月に全ての編成に入るようになって、値上げもさせて頂いていたんですね。
DSI 大型ビジョンなど他のデジタルOOHが苦戦する中で、好調さを維持されているという事ですね。
山本さん こうした市況のなかで、前年をクリアしてプラスになっている媒体というのは珍しいのではないでしょうか。今年の夏には新たに京葉線にもモニターが入ってきますので、ある程度は右肩上がりで動いていくのではと思っています。
DSI 従来の中吊り、ポスター、コルトンに比べるとデジタルサイネージは初期投資が重いビジネスですが、その点についてはどうお考えでしょうか?
山本さん そうですね。確かにイニシャルのコストは大きいですね。今までは駅にサーバーを置いて、ホームと電車を無線で繋いでいたんですね。ただ、先ごろ、導入した成田エクスプレスからはWiMAXを利用して、サーバーから直で電車に送れるようになったので負担は少なくなりましたね。今年の京葉線もwimaxを使用します。イニシャルコストの中で大きな割合を占めるのが工事費ですので、設置のハードルはずいぶん下がります。
コスト回収のシミュレーション
DSI コストの回収のシミュレーションはどのように考えていますか?
設備の耐用年数が5年ですので、5年以内での回収を目指しています。ただ、5年経つといろいろな施設が古くなってしまうので、3年で償却を含めて回収するのがベストですが、こうした市況では少し厳しい部分があります。
DSI デジタルサイネージの媒体事業で3年回収する事が可能なところは少ないですよね。
小型のモニターならば可能かもしれませんね。30インチ以下になるとモニターのコストが劇的に安くなって、それに併せて、工事費も安くなります。50インチ以上のモニターは導入コストに比例して、工事費も高くなるのがネックになります。

株式会社ジェイアール東日本企画 交通媒体本部 媒体開発部 部長 山本氏
DSI 最近、面数が増えてきたデジタルポスターに関してはいかがでしょうか?
山本さん 現在、首都圏で70面程度ですので、稼働率に関してはまだまだです。これから面数を増やして200台から300台になった時の稼働率がどうなるか、という事がポイントですね。
DSI 想定している顧客層はどんなところになりますか?
山本さん デジポに関しては駅によって全くちがいますね。東京や品川はナショナルクライアントが多いですが、秋葉原や五反田はローカルなクライアントが圧倒的に多いですね。秋葉原は地元のショップさんやネットカフェなども広告を掲載頂いています。そうしたエリアのクライアントからするとデジタルサイネージというよりは画像が変えられる看板として買って頂いているんだと思います。
トレインチャンネルとコンテンツ
DSI トレインチャンネルらしいコンテンツとはどんなものでしょうか?
山本さん まずひとつに、「音がなくても理解できるもの」という事があります。純広ではなくてインフォマーシャル的な、情報提供も含めたコンテンツも特徴のひとつです。今だったら、サッポロさんのお店紹介や、任天堂さんの一口雑学まめ知識などです。それ以外に私どもが独自に提供しているコンテンツ枠があります。ニュース、天気予報、占いが定番で、それ以外は上期、下期でコンテンツを入れ替えています。今は刑事ドラマ風タッチで、気軽に経済を楽しく学べる『ケーザイ刑事』などが公開されています。今は終わってしまいましたが『ダーリンは外国人』なども人気のあったコンテンツですね。ただ、定番のニュースや天気予報以外に何が良いのかという問題の結論は出ていないです。アニメや雑学などいろいろなコンテンツを出してお客様の反応をみているところですね。
DSI パブリックな空間におけるコンテンツのあり方についてはいかがでしょうか?
山本さん 交通広告は基本的にトーン&マナーが厳しいものになります。特に電車の中では見たくないものにも、目を背けることができないので、ある一定以上のグレードは維持しなければならないと言えます。
DSI 山本さんが個人的にいいなと思うコンテンツはありますか?
山本さん ニュースや天気は基本的に読んでしまうコンテンツですので、アニメのように肩肘はらずに楽しめるコンテンツもいいかもしれませんね。また、twitterやAR のように双方向性のあるコンテンツも可能性があると思います。ただ、プロモーション・メディアとしてアイキャッチにつながるのですが、アドモデルではどのように価格に転嫁していくかという問題がありますね。
トレインチャンネルとデジタルポスターの今後
DSI 今後の目標を教えて頂けますか?
山本さん トレインチャンネルに関してはJRの車両計画に基づいて、今年の夏から京葉線に1年程度をかけて入っていく形になります。今16000面程度ですので、その導入が進めば2012年頃には20000面位になっていきます。デジポに関しては今年度末には150面程度に増やすことを予定しています。来年度も百数十面増やす予定がありますので、2010年度末には250面程度は視野に入るのではと考えています。また面数の増加に併せて、ネットとの連動などコンテンツの拡充も図っていきたいですね。
DSI 面数に関しては順調に増えていくという事ですが、それ以外の目標はありますでしょうか?
山本さん やはり「連携」ですね。昨年から、弊社のトレインチャンネルとJR西日本さんのWESTビジョンを共同で販売しています。今後は他の媒体社さんとの接点を増やしていくことになりそうですね。他社さんと共同の企画を立てるときには「お互いの媒体の稼働率を上げていきましょう!」という事がテーマになりますね。
現在のように広告が売れていない時だからこそチャンスかもしれませんね。共同で企画商品をたてることなどに可能性があるかもしれませんね。
今後、デジタルサイネージが成熟期に入って、電鉄系同士の結びつきや、電鉄系とコンビニ系が組んでいくという議論が生まれるかもしれませんね。他社さんとのコラボレーションもそうですが、電車と駅のつながりやグループ内でのネットワークなど、連携がキーワードや課題になっていくのは間違いないですね。
DSI 最後に、デジタルサイネージの今後とjekiさんの目標をお聞かせください。
山本さん デジタルサイネージコンソーシアムが発足した2007年から少しづつ盛り上がってきていますね。去年は景気も低迷して、伸び的には鈍くなりましたが、今年になってローソンさんとADKさんの新会社やファミリーマートさんなどコンビニ系のデジタルサイネージの動きが出てきましたね。
駅や商業施設に限らず、数が増えていくことは間違いないです。問題はロケーションが増えていったときにメディアとして認知されるかどうかという問題ですね。また、顔認証などの効果測定やクリエイティブの問題もあります。ここ1~2年でメディアとしてのポジションが確立できるかどうかという正念場になるでしょう。jekiのデジタルサイネージとしては、同じように増えていくのですが、看板やポスターがなくなるわけではないので、よりベストな組み合わせというもの考えた上で、増やしていかないといけません。駅全体の広告の中で、メディアミックスとしてのサイネージの位置づけをしっかりと見出していくのが当面の目標になりますね。
DSI 今日はありがとうございました。
―インタビュー終わり
「連携」がキーワードに
広告市場が非常に冷え込んでいるなかで、トレインチャンネルは面数や販売実績、共に堅調とのことでした。今回は広告サイドからのお話がメインだったのですが、公共空間におけるデジタルサイネージとして、ユーザーに「便利なもの・役に立つもの」として認知があるからこそ、広告媒体として成立があると感じました。世界的にみても、車両内のデジタルサイネージのコンテンツとしては既に完成度が高いと思うのですが、「これからも色々と試していきます」という姿勢にはちょっとびっくりしました。また、グループ内や他のデジタルサイネージ媒体との連携がキーワードになっていくというお話も印象的でした。リテールの事業者さんとのコラボレーションが始まれば「電車の中でも、コンビニでも」という複数のタッチポイントが生まれるので、新しいコミュニケーションや体験を喚起することができるかもしれませんね。JRをいつも利用する一ユーザーとしては、生活導線上にあるメディアとしてリラックスしながら見れて、ちょっぴり役にたつコンテンツが増えるといいなと思います。トレインチャンネルは公共性の高いメディアですので、今後の更なる発展に期待したいところですね。
先日もテネシー州 Knoxville での市と広告会社との裁判の事例をご紹介しましたが、ロサンゼルスの街でもデジタルサイネージによる広告公害の問題が持ち上がっているようです。
住民側は、スカイラインに並ぶ多数のデジタルビルボードにより居住者の視覚環境(visual environment)が損害を受けているとしてロビー活動を展開し、市当局も環境に関する州法に照らしてデジタル看板に関する規制を見直す必要があると発表したようです。ロサンゼルスでは現在、6ヶ月間に渡り新たなデジタル看板の設置が停止されています。
実は、2002年にロサンゼルス市はプラズマパネルを使った新しいビルボードの設置申請をいったん却下しているのですが、それに対して看板会社が市の条例は無効であるとして訴えを起こし、結果として 850箇所の看板をプラズマスクリーンのデジタルビルボードに置き換える許可を得たという経緯があります。
ブラジルのサンパウロ市でも屋外看板を禁じる法律が施行され、街中の看板が撤去されたという事例があります。
従来の看板に比べて格段にインパクトがあることから、景観の問題はデジタルサイネージにとって避けて通れないものかも知れません。
A blazing row is continuing to rage in Los Angeles after the city council gave its approval to upgrade hundreds of the city’s billboards to plasma technology.
(LA residents say digital ads are “stealing the night” より、一部引用)
街中にデジタルサイネージが増えすぎると交通標識との干渉や景観の問題などが持ち上がってくるというのは容易に想像できるわけですが、アメリカではデジタルビルボードを巡る論争がいくつも起こっているようです。
テネシー州の町 Knoxville では、ビルボード(大型看板)のデジタル化を巡って 2006年から続いてきた論争が裁判に発展しています。
市の見解ではデジタル化はビルボードの新規設置に相当し、大型看板の新たな設置を禁じた法律に抵触するとのこと。一方、広告会社側は既存の看板をデジタル化するだけであり問題はない上、差し止め命令は表現の自由を制限するものだとして法廷で争う意向です。
以前にもサンパウロ市で屋外看板がすべて撤去された事例について書きましたが、景観や広告公害の問題もあるので、コンセンサスの醸成と法整備が必要ですね。
Lamar Advertising is taking the city of Knoxville, Tennessee to court after a long-running dispute over conversion of two billboard sites to digital.
(Lamar takes city to court over digital billboard ban より、一部引用)
ヨーロッパ滞在中に見かけた、ちょっと変わった屋外広告(OOH)のアイディアを映像でご紹介します。
電車やタクシーの車内、エレベーターや待合室といった特定の場所を別にすれば、公共空間でデジタルサイネージの画面を見てもらうためには、通行中の人々に足を止めてもらう必要があるわけですが、そのヒントは伝統的な屋外広告の手法の中にも見つけられるかも知れません。

アメリカの巨大メディアグループ Clear Channel Communications のデジタルサイネージネットワークが、18歳のグラフィティ・アーティストにハッキングされたというニュースがありました。
supertouch blogによると、グラフィティ・アーティストSKULLPHONEがメディアグループClear Channelの電子看板ネットワークをハッキング、ロサンゼルス周辺10か所のデジタルビルボードを自分のトレードマークである「骸骨と携帯」イメージで乗っ取ることに成功したとのこと。
(18歳のグラフィティ・アーティスト、LA周辺10か所の電光掲示板をハッキング - Engadget Japanese より一部引用)
結局、このニュースは一部間違いで、続報(SKULLPHONEのデジタル看板「ハッキング」、実は有料広告)によると「単に1日分の料金を支払って掲載された正規の広告にすぎなかった」ようですが、広告手法としてはちょっと面白いように思います。
一方で、デジタルサイネージを使って発信される情報の信頼性に対する警告の意味もあったのかな、と感じました。まだテレビのように法規制が整備されていない新しいメディアであるだけに、広告なのかニュースなのかハッキングされたものなのか、にわかに判別できないとしたら危なっかしいところがあります。
その辺りのガイドラインづくりは、公共スペースへの機器設置の際の安全基準などと共に、今後整備を急ぐ必要があるでしょう。
小田急新宿駅で2月22日から実施されている「香る新宿駅プロジェクト」が、イベント終了まであと1週間を切りました。
これは、NTT コミュニケーションズが開発した香りを発生させることができるデジタルサイネージディスプレイを使用したもので、小田急線新宿駅西口地上改札口に設置されているデジタルポスターからさまざまな香りを噴霧するというものですが、今回は資生堂の新製品「ばら園」と「世界らん展日本大賞2008」の告知のために、「ばら」と「カトレア・ドウィアナ(熱帯に咲く原種ランの1種)」のフレグランスを噴霧しているそうです。
この「香るデジタルサイネージ」に関しては、昨年末にもビールが飲みたくなる香りを発生させて集客効果を測定するという実証実験が行われていましたが(NTT Com ニュースリリース)、香りを発生するタイプのデジタルサイネージというのは世界でもほかに例がありませんし、どんな香りが出ているのか気になりますね。
開催時間は10時〜17時。3月6日までですので、体験してみたいという方はお急ぎください。
以下、「香る新宿駅プロジェクト」−デジタルポスターが香りのプレゼント - 新宿経済新聞より引用します。
同イベントは、小田急電鉄、NTTコミュニケーションズ、資生堂、ナイアガラソリューションズ(港区)のコラボ企画。小田急百貨店の中央口を入って右奥にある小田急線西口地上改札口の手前に設置されているデジタルポスター(液晶画面を中心に据えた壁掛け型の広告媒体)にNTTコミュニケーションズが開発した技術「香るデジタルサイネージ」をインストールし、クライアントが提供する「香り」を特殊な香りディフューザーから噴霧することで、改札通路の歩行者に「香りをプレゼント」(同イベント担当者)するもの。
昨年シカゴで行われたデジタルサイネージ EXPO のムービーを公開します。ニューヨークの映像も含まれます 。
日本からの来場者はとても少なかったように思いますが、今年はどうでしょうか。
以上は私が撮影してきたものですが、以下は事務局が作成したオフィシャルな紹介ビデオです。