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先日もテネシー州 Knoxville での市と広告会社との裁判の事例をご紹介しましたが、ロサンゼルスの街でもデジタルサイネージによる広告公害の問題が持ち上がっているようです。
住民側は、スカイラインに並ぶ多数のデジタルビルボードにより居住者の視覚環境(visual environment)が損害を受けているとしてロビー活動を展開し、市当局も環境に関する州法に照らしてデジタル看板に関する規制を見直す必要があると発表したようです。ロサンゼルスでは現在、6ヶ月間に渡り新たなデジタル看板の設置が停止されています。
実は、2002年にロサンゼルス市はプラズマパネルを使った新しいビルボードの設置申請をいったん却下しているのですが、それに対して看板会社が市の条例は無効であるとして訴えを起こし、結果として 850箇所の看板をプラズマスクリーンのデジタルビルボードに置き換える許可を得たという経緯があります。
ブラジルのサンパウロ市でも屋外看板を禁じる法律が施行され、街中の看板が撤去されたという事例があります。
従来の看板に比べて格段にインパクトがあることから、景観の問題はデジタルサイネージにとって避けて通れないものかも知れません。
A blazing row is continuing to rage in Los Angeles after the city council gave its approval to upgrade hundreds of the city’s billboards to plasma technology.
(LA residents say digital ads are “stealing the night” より、一部引用)
街中にデジタルサイネージが増えすぎると交通標識との干渉や景観の問題などが持ち上がってくるというのは容易に想像できるわけですが、アメリカではデジタルビルボードを巡る論争がいくつも起こっているようです。
テネシー州の町 Knoxville では、ビルボード(大型看板)のデジタル化を巡って 2006年から続いてきた論争が裁判に発展しています。
市の見解ではデジタル化はビルボードの新規設置に相当し、大型看板の新たな設置を禁じた法律に抵触するとのこと。一方、広告会社側は既存の看板をデジタル化するだけであり問題はない上、差し止め命令は表現の自由を制限するものだとして法廷で争う意向です。
以前にもサンパウロ市で屋外看板がすべて撤去された事例について書きましたが、景観や広告公害の問題もあるので、コンセンサスの醸成と法整備が必要ですね。
Lamar Advertising is taking the city of Knoxville, Tennessee to court after a long-running dispute over conversion of two billboard sites to digital.
(Lamar takes city to court over digital billboard ban より、一部引用)
小田急新宿駅で2月22日から実施されている「香る新宿駅プロジェクト」が、イベント終了まであと1週間を切りました。
これは、NTT コミュニケーションズが開発した香りを発生させることができるデジタルサイネージディスプレイを使用したもので、小田急線新宿駅西口地上改札口に設置されているデジタルポスターからさまざまな香りを噴霧するというものですが、今回は資生堂の新製品「ばら園」と「世界らん展日本大賞2008」の告知のために、「ばら」と「カトレア・ドウィアナ(熱帯に咲く原種ランの1種)」のフレグランスを噴霧しているそうです。
この「香るデジタルサイネージ」に関しては、昨年末にもビールが飲みたくなる香りを発生させて集客効果を測定するという実証実験が行われていましたが(NTT Com ニュースリリース)、香りを発生するタイプのデジタルサイネージというのは世界でもほかに例がありませんし、どんな香りが出ているのか気になりますね。
開催時間は10時〜17時。3月6日までですので、体験してみたいという方はお急ぎください。
以下、「香る新宿駅プロジェクト」−デジタルポスターが香りのプレゼント - 新宿経済新聞より引用します。
同イベントは、小田急電鉄、NTTコミュニケーションズ、資生堂、ナイアガラソリューションズ(港区)のコラボ企画。小田急百貨店の中央口を入って右奥にある小田急線西口地上改札口の手前に設置されているデジタルポスター(液晶画面を中心に据えた壁掛け型の広告媒体)にNTTコミュニケーションズが開発した技術「香るデジタルサイネージ」をインストールし、クライアントが提供する「香り」を特殊な香りディフューザーから噴霧することで、改札通路の歩行者に「香りをプレゼント」(同イベント担当者)するもの。
昨年シカゴで行われたデジタルサイネージ EXPO のムービーを公開します。ニューヨークの映像も含まれます 。
日本からの来場者はとても少なかったように思いますが、今年はどうでしょうか。
[youtube:http://youtube.com/watch?v=Z3jgjCB4uXE]
以上は私が撮影してきたものですが、以下は事務局が作成したオフィシャルな紹介ビデオです。
公共性の観点から、デジタルサイネージと広告公害について 考えてみたいと思います。
デジタルサイネージは、またの名を「アウト・オブ・ホーム・アドバタイジング(屋外広告)」と呼ばれるように、公共空間(パブリック・スペース)に設置されるものです。そのため、やはり広告公害の問題とも無縁ではいられないでしょう。
2006年の話になりますが、ブラジル・サンパウロ市では、屋外広告を大々的に規制する法案が成立しました。
サンパウロ市議会は26日、市内のアウトドアー広告公害追放をめざすカサビ市長法案を賛成41票、反対1票をもって可決、カサビ市長は同日裁可した。来年1月1日から実施される。
ビル、私有地、公有地に無秩序に立てられた看板や商店の宣伝を規制する内容で、実施によって市内の景観をよくするのが狙い。
具体的には電子パネル、アウトドアー、バナー、横断幕等による広告の規制で、商店、銀行、サービス会社は正面看板を縮小させられる。
また、タクシー、飛行機、飛行船による広告、街頭での宣伝ビラ配布も禁止する。違反に対する罰金は最低が1万レアル。
この法案は 2007 年には実際に施行された模様です。街の様子を撮影した画像が公開されています。
> São Paulo No Logo by Tony de Marco:Flickr.com
また、実際に看板が撤去された街に対する人々の反応や様々な副作用についてはこちらの記事(英文)で見ることができます。
それによると、撤去の対象がポスター部分だけであったため枠の部分はそのまま残されてゴーストタウンのような景観になってしまっていることや、貧乏な人たちの中には自宅の庭や住宅の壁面を広告スペースとして売ろうとする人々が現れるなどの予想外の事態が報告されています。
São Paulo: The City That Said No To Advertising
個人的には、単に広告を撤去すればよいというものではなく、むしろそのクオリティや内容の方を問うべきだろうと思っています。例えばロンドンの地下鉄(Tube)には壁面いっぱいに直貼りされたクールな巨大ポスターがあった方が断然いいと思うし、とにかくカッコよくて人々を楽しませてくれるようなポスターである限りは、公共の利益にそれほど反しないんじゃないかと思います。
とはいえ、デジタルサイネージは家庭のテレビと違ってチャンネルを変えたり電源スイッチを切ることができないわけですから、無理矢理見せられて不快な内容・クオリティであれば広告公害となるでしょう。そういった意味で、公共性というものをこれまで以上に意識せざるを得ないメディアであると言えるのではないでしょうか。
他方、海外では建物の壁面全体がデジタルパネルで構成されたような建築物がすでに登場し始めており、それに関する国際会議なども開かれています。こうした「デジタルサイネージ建築」とでも言うべきものについてはまたあらためて書こうと思いますが、これはデジタルサイネージが単なる看板としてではなく、都市の景観そのものを形作っていく可能性があるということではないかと思います。そうなるとますます公共性というものが重要になってきますね。