日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
以前の記事で(ポータブル・プロジェクターはデジタルサイネージをどう変えるか?)書いたプロジェクターの可能性ですが、中型や大型のデジタルサイネージにも活用の場が増えてくるのではと思っています。画面サイズの自由さによって可能になる表現は、ストレッチLEDやマルチディスプレイが与える印象とは違ったものになります。短焦点タイプの登場や高性能なフィルムの利用によって、街頭に面したロケーションで日中でも視認性の高いサイネージを実現する事が出来るようになっています。
街角に設置されている一般的なデジタルサイネージのディスプレイはユーザーにとって限りなく「テレビでしょ・・・」という認識しか与えていないのではないでしょうか。家庭であまりにも馴染んだベゼルに囲まれたスペースが街中に設置されただけでは、印象に残る体験を提供するのは難しいと言えます。そういた意味でもスクリーンサイズを限定されないプロジェクターは可能性があります。
またプロジェクターは今までイベント用の大型映像などで活用されて来た実績があります。普段見慣れたサイズの映像から離れたスケール感がどんな体験を与えるのかという意味で、いわゆる「イベント映像」の表現から学べる事も多いのではないでしょうか。
下記に紹介する映像はカナダのケベック・シティが市制400周年を迎えた際の映像です。海岸の巨大なサイロをスクリーンに見たてて、20000ルーメンの高輝度なプロジェクターで映像を投影しています。映像はケベック出身の演出家ロベルト・ルパージュによるものです。
よりきれいな映像とプロジェクトの経緯はこちら
プロジェクターはウシオ電機が92年に買収したクリスティ・デジタル・システムズ社のものです。こうした大掛かりなイベント映像とデジタルサイネージを同列に語る事はできないと思いますが、コンテンツを考える時のヒントになる部分はありそうです。
巨大なデジタルサイネージを用いて、ビルの壁面が巨大な映像装置になったような建物が世界各地にでき始めています。すでにタイムズスクエアだけの話ではなくなっているのですね。
以前、サイネージ建築(Media Architecture)の可能性という記事でメディア・アーキテクチャー(Mediaarchitecture)についてご紹介しましたが、ヨーロッパではこうした建築物の表面を使ったビデオ映像による表現が「メディア・ファサード」いうひとつのジャンルを形成しており、アートフェスティバルも開催されているという状況です。
> Mediaarchitecture » Media Facades Festival 2008
今後は、建築の一部としてデジタルサイネージが組み込まれ都市の景観を形作っていくというのが当たり前になるのかも知れません。
これはオーストリアの Graz という街の美術館に設置されたもので、蛍光灯のサークル管を使ってうねうねとした建物の壁に沿って取り付けられています。
こちらも蛍光灯を使ったシステムで、ドイツのものです。
次は東京の銀座にあるシャネル・ビルの壁面です。雨に合わせたコンテンツが表示されています。
最後はマカオのカジノのビルです。ラスベガス以上に派手ですね。上の事例に比べると「電飾」的な色合いが濃くなります。メディア・ファサードというよりは看板建築という感じでしょうか。
欧米の病院でスタッフや医師の間の情報共有と来院者に対する情報提供を行うデジタルサイネージの導入が増えているようです。
先日ご紹介したジョージ・ワシントン大学病院での事例と同じく、英バーミンガム市の大学病院でもデジタルサイネージとスタッフの PC 画面のスクリーンセーバーを組み合せたシステムが採用されています。
5,000台の PC 画面とリンクされた 75台の 42インチ LCD ディスプレイ(写真)を使って、6,900人のスタッフと年間 100万人の患者にリアルタイム情報を提供するシステムは、Saturn Communications Group の Connectvision というシステムです。
導入の理由は、古い情報や誰が管理しているのかわからないメッセージが掲示板に貼られたままになっている状況があったためで、新しいデジタルサイネージでは、患者向けの LCD ディスプレイで病院からのお知らせ、レストランのメニュー、トレーニング情報、交通情報、天気予報や全国ニュースなどを表示し、スタッフ向けの PC 画面では手洗いを促すアラートや節電などの運営上の連絡事項などを表示しています。
Two hospitals in the British city of Birmingham have combined digital signage with screen-savers on staff PCs to communicate with healthcare workers, patients and visitors alike.
(Hospital network combines digital signage, PC screens より、一部引用)
2009年4月のオープンに向けて13億ドル(約1,240億円)で建設中の新しいヤンキースタジアム(New York)では、1,100台のデジタルサイネージが設置されます。
約1,600万ドル(約15.3億円)で Cisco 社が受注したこのデジタルサイネージシステムでは、ファンが一瞬でもプレイを見逃す心配がないように、レストランやトイレなどあらゆる場所に HD のフラットパネルディスプレイを設置し、試合の前後に選手の成績情報やバッティング練習の様子などを放映するほか、ハイライト映像やアーカイブ、プロモーションメッセージ、周辺の交通情報なども表示します。
さらに、病気などで球場に来られないファンと選手が直接ビデオチャットできるシステムや、タッチパネル式の携帯端末から食べ物やグッズをオーダーできるシステムもスイート席には装備されるそうです。
The technological prowess acquired by the Yankees includes the ability to program 1,100 flat-panel, high-definition TV monitors with live game coverage, archival and highlight video, statistics, promotional messages and weather and traffic updates.
(Triple Plays at New Yankee Stadium - Video, Internet, Voice より、一部引用)
ヨーロッパでは日本よりもデジタルサイネージの導入が進んでおり、様々な事例が見られます。
以下のムービーはロンドン・アムステルダム・ドイツ各地で撮影したデジタルサイネージの事例をまとめたレポートです。
今後は生活のあらゆる場面でデジタルサイネージが使われるようになるだろうということがわかると思います。
ある意味、究極のデジタルサイネージといえそうな Panasonic Lifewall を見てきました。CEATEC 2008 でも発表され、海外での評価も非常に高かったものですが、お台場のパナソニックセンターで見られるようになりました。
壁が一面ディスプレイになっていて、身振りで操作できるインターフェイスを備えています。壁の模様替えをしたり、デジカメから写真を選んで飾ったりというデモのほか、ビデオ会議風に遠隔地からバイオリンのレッスンを行うなどの活用シーンを見せてくれます。
リアプロジェクションなので壁の裏に隠し部屋が必要になってしまいますが、将来的には家庭でも使われる日が来るのかも知れません。In-Home っぽい製品ですが、名古屋のミッドランドスクエアに導入されているらしいです。
以下は CEATEC 2008 でのデモンストレーションの様子です。
こういうのを見ると、デジタルサイネージの可能性は無限に広がっているのでは、という気がします。
私の考えでは、視聴者の注意を引こうとするアテンション・メディアは、メディアの密度が一定値を超えたところで効果がなくなるため、今後はアンビエント・メディアの方に可能性があるのだろうと思っています。
その意味でもこの事例は最先端を行っていると言えますが、情報を伝えるだけでなく、体験を提供できるところにアンビエント・メディアの大きな可能性を感じます。
このほかにもメディア・アーキテクチャーやメディア・ファサードのようにもっと規模の大きい事例もご紹介してきましたが、映像で環境をつくってしまうのがアンビエント・メディアということの意味でしょう。
それでは、この素晴らしいファッションショーをお楽しみください。