日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
巨大なデジタルサイネージを用いて、ビルの壁面が巨大な映像装置になったような建物が世界各地にでき始めています。すでにタイムズスクエアだけの話ではなくなっているのですね。
以前、サイネージ建築(Media Architecture)の可能性という記事でメディア・アーキテクチャー(Mediaarchitecture)についてご紹介しましたが、ヨーロッパではこうした建築物の表面を使ったビデオ映像による表現が「メディア・ファサード」いうひとつのジャンルを形成しており、アートフェスティバルも開催されているという状況です。
> Mediaarchitecture » Media Facades Festival 2008
今後は、建築の一部としてデジタルサイネージが組み込まれ都市の景観を形作っていくというのが当たり前になるのかも知れません。
これはオーストリアの Graz という街の美術館に設置されたもので、蛍光灯のサークル管を使ってうねうねとした建物の壁に沿って取り付けられています。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=Uq1lkrtAJ_0]
こちらも蛍光灯を使ったシステムで、ドイツのものです。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=jsupzIjagR4]
次は東京の銀座にあるシャネル・ビルの壁面です。雨に合わせたコンテンツが表示されています。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=7pA5RESEaOQ]
最後はマカオのカジノのビルです。ラスベガス以上に派手ですね。上の事例に比べると「電飾」的な色合いが濃くなります。メディア・ファサードというよりは看板建築という感じでしょうか。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=yKrpA7Z3KeY]
パリのフランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France)の壁面をドイツのハッカー集団 CCC がデジタルサイネージ化したプロジェクトがあります。2002年にアートプロジェクトとして行われました。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=2pjPapxUrx0]
元々はハッカーたちのユーモアがきっかけで、ベルリン市内のビルの窓を巨大なモニター画面に変えてしまった Blinkenlights というプロジェクト(2001年)が始まりです。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=VYEBB-0CSiw]
その後ミュージックビデオにフィーチャーされるなどアートシーンにも多大な影響を与えたこのプロジェクトは、メディア・アーキテクチャーと呼ばれる一連の建築物や、メディア・ファサードと呼ばれるアート作品へと受け継がれて行きます。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=vWL1QOXAcgM]
そして2008年10月にはカナダのトロント市で行われたオールナイト・アートイベント Nuit Blanche Tronto への招待を受け、市庁舎のツインタワーを使った Blinkenlights Stereoscope が実現しています。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=jTZosieGhIQ&ap=%2526fmt%3D18]
デジタルサイネージが普及するつれて、一昔前にはビデオアートと呼ばれていたようなものが日常の空間に次々と出現している現実を考えれば、現時点ではアート作品と呼ばれているこれらのメディア・アーキテクチャーも数年先には広告や看板のように一般的な存在になっているのかも知れません。
デジタルメディアによって都市の空間にアプローチを試みるメディア・ファサードについては、またあらためて取り上げたいと思います。
中東のドバイに 100m x 20m という非常識なまでの巨大 LED スクリーンが誕生します。
現地の建設会社 Tameer が計画中の Podium タワーには、建物のファサード全体を覆う高さ 100m、幅 20m の LED スクリーンが設置されます。もちろん世界最大で、1.5キロ先からでも見えるそうです。
世界中が不景気でも中東は関係ないんでしょうか。それにしてもスゴいです。もしかしたら数十年後を先取りした建物になるのかも知れませんね。
Dubai-based construction company Tameer is boasting that it’s about to build the world’s largest LED screen, which will cover the entire 100m x 20m facade of Podium, the latest landmark office block to pop up in the desert Kingdom’s Majan district.
(Dubai to build biggest ever LED screen より、一部引用)
米フィラデルフィアにとんでもないデジタルサイネージが登場です。
先月初めフィラデルフィアのダウンタウンにグランドオープンした Comcast Center ビルのロビーには 25.38m x 7.74m の巨大 LED ビデオウォールが設置されています。4.6mm ピッチの LED モジュールを 6,771個パネリングしたもので、1,000万ピクセルの解像度(FullHD の約5倍)を誇ります。
この超巨大デジタルサイネージは、米国最大手のケーブルTV会社である Comcast と不動産大手の Liberty Property Trust が建設したスカイスクレイパーのロビーにあり、7層吹抜けになったガラスのアトリウムで一般市民に公開されています。
コンテンツはニューヨークの Niles Creative Group が手がけたもので、建築そのものと一体化して見えるようにつくり込まれているため、ほんとうにそこにモノが存在しているようなリアリティを幻出しています。
前置きはこれくらいにして、とにかくビデオをご覧ください。
[youtube:http://youtube.com/watch?v=BO6ty5RfnrA&ap=%2526fmt%3D18]
LED パネルが隅から隅まで隙間なく設置されているうえ、周囲の(リアルな)壁面を構成する木製パネルが画面上でも精密に再現されているため、本物と映像との見分けがつかなくなり、壁の手前にモノが表れたり、本当に人がいるかのように見えてしまいます。
コンテンツは人工知能を応用したシステムにより曜日や時間帯、ホールの利用内容などに応じて自動調整され、現実とイリュージョンの境界を行き来するような見事な体験を1日18時間にわたって市民や観光客に提供します。この Comcast Experience プログラムは、Comcast 社のメッセージを鮮明に焼き付けるだけでなく、ビルのオーナーにとっても建物の不動産価値を引き上げる意味があります。また、単なるデジタルサイネージとしてではなく、公共の空間にアーティスティックな焦点となるようなスペクタクルを提供する全く新しいメディアとして取り組んだ結果、このような素晴らしいものが生まれたそうです。
バックエンドを支えるのはグローバル企業である Barco 社の LED システムで、4,000:1 のコントラスト比を持つブラック LED が使われています。
ある情報によれば、このデジタルサイネージには 2,200万ドル(約 22.5 億円)もの費用がかかっているそうですが、フィラデルフィアの新たなエンターテインメントとして観光の目玉になることは間違いないでしょう。
ところで、アメリカのデジタルサイネージ EXPO は毎回注目すべき事例のある都市で開催されてきていますが、今年秋の開催地にフィラデルフィアが選ばれた背景はこれでしょう。ちなみに昨年のシカゴの時はハイアット・リージェンシーホテル、今年のラスベガスは数多くのカジノに導入されたデジタルサイネージの事例が理由だったものと思われます。
最後に Comcast Experience の写真をあと何枚か載せておきます。やっぱりアメリカはスゴいですね。
建物の外壁全体をデジタルスクリーンに変えてしまうような建築物が登場し始めています。
しかも商業施設のみならず、国立図書館なども含まれています。
すでに 2007年9月にはロンドンでカンファレンスも開催されました。
mediaarchitecture:メディア・アーキテクチャー
現時点では奇抜さだけが目立つ感もありますが、近い将来、こういったものが当たり前にならないとも限りません。 今のところ LED などの発光体を使ったものがほとんどのようなので夜間にしか見えないだろうと思われますが、電子インク(electric ink)のような反射型ディスプレイの技術が一般化すれば昼間にきれいに見えるものも実現できます。


ただ、こうした新しい試みも、一方的に映像を表示しているだけでは単に電飾が大型化したものに過ぎないのかも知れません。ところが、これにインタラクションを加えるとちょっと面白いものになりそうです。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=fEykA6Qd2L8]
以前に紹介した MegaPhone もそうでしたが、インタラクティブなものに人は興味を惹かれる習性があるように思います。
「空間知能化」というキーワードをご存知でしょうか?
ロボティクスの世界ではいま注目されている考え方だそうで、私も門外漢ながら空間知能化の研究会なるものに参加させていただいています。
どういうことなのか簡単に説明すると、ロボットをひたすら賢くしていくよりも、そのロボットが働く空間の方にセンサーなどを埋め込んでやって、そのセンサーから得られる情報を逐次ロボットに知らせてあげた方が簡単なのではないか、という話です。
例えば、部屋の中に様々なものがあった場合、ロボットにその全てを自分で認識させてぶつからないように動作させるのは大変ですが、部屋のあちこちにカメラやセンサーが設置されていて、ロボットがなにかにぶつかりそうになったら知らせてやるようにすれば、ロボット自体はそのことから解放され、本来の仕事のための機能に集中させることができるでしょう。
一見デジタルサイネージとは全く関係がないように見えますが、行き着く世界は案外近いようにも思います。
というわけで、「空間知能化」に興味のある方々へのお知らせです。
慶応義塾大学田中浩也研究室 × 彼岸寺
Nature, and Beyond -アニミズムとサイエンスが出会うデザイン展- 開催のお知らせ生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っている=アニミズム。自然を科学的に分析の対象として捉えてみる=サイエンス。
田中浩也研究室では、先端科学の動向を参照しつつ、またそれと同時に個々人の自由な発想と感性によって自然を捉え、常に「自然を参照する」ことによって、昨今の「ユビキタス」と呼ばれる新興技術群を用いたデザインの試みを行って来ました。
当研究室の目的はこれらの技術を「機能」の問題ではなく「表現」の問題として捉え、新たな“見える価値”を提示することです。本展覧会は、寺院というまさに森羅万象と人間との深淵な対峙によって築かれた精神文化を担う場において、アニミズムとサイエンスはいかなる相補性を持ち、いかなる相乗効果を生み出すかを世に問う試みです。
展示予定作品:
Plantio (日本グッドデザイン賞2007新領域部門受賞等)
Oto-Shigure (WISS2007最優秀デモ発表賞受賞等)
Ene-Geomatrix (学生CGコンテスト2007インタラクティブ部門最優秀賞等)
石のイシ (CHI2007発表、日本科学未来館「予感研究所」出展等)
SKYLIGHT (JWDA日本ウェブデザインアワード・ニューフェイス賞等)
Bogs (SIGGRAPH2007アートギャラリー出展等)
および新作日程:2008年3月7日〜8日 17時〜22時
*法要等が入った場合は、展覧会が中止となる可能性があります。
中止の場合は当日朝までにWEBページにてお知らせします。会場:梅上山 光明寺
営団日比谷線 神谷町駅から徒歩1分
※車でのご来場はご遠慮ください
入場無料お問い合わせ:田中浩也研究室
TEL:090-7224-5231主催:田中浩也研究室×彼岸寺
トークシンポジウム出演予定者:
渡邊淳司(NTT/さきがけ)
石若裕子(SoftBank)
福原志保+Bradley Fraser (バイオメディア)
松本圭介×松下弓月(彼岸寺:http://www.higan.net)詳しい日程・内容・アクセス方法はウェブサイトをご参照ください
http://mountain.sfc.keio.ac.jp/NatureAndBeyond/
公共性の観点から、デジタルサイネージと広告公害について 考えてみたいと思います。
デジタルサイネージは、またの名を「アウト・オブ・ホーム・アドバタイジング(屋外広告)」と呼ばれるように、公共空間(パブリック・スペース)に設置されるものです。そのため、やはり広告公害の問題とも無縁ではいられないでしょう。
2006年の話になりますが、ブラジル・サンパウロ市では、屋外広告を大々的に規制する法案が成立しました。
サンパウロ市議会は26日、市内のアウトドアー広告公害追放をめざすカサビ市長法案を賛成41票、反対1票をもって可決、カサビ市長は同日裁可した。来年1月1日から実施される。
ビル、私有地、公有地に無秩序に立てられた看板や商店の宣伝を規制する内容で、実施によって市内の景観をよくするのが狙い。
具体的には電子パネル、アウトドアー、バナー、横断幕等による広告の規制で、商店、銀行、サービス会社は正面看板を縮小させられる。
また、タクシー、飛行機、飛行船による広告、街頭での宣伝ビラ配布も禁止する。違反に対する罰金は最低が1万レアル。
この法案は 2007 年には実際に施行された模様です。街の様子を撮影した画像が公開されています。
> São Paulo No Logo by Tony de Marco:Flickr.com
また、実際に看板が撤去された街に対する人々の反応や様々な副作用についてはこちらの記事(英文)で見ることができます。
それによると、撤去の対象がポスター部分だけであったため枠の部分はそのまま残されてゴーストタウンのような景観になってしまっていることや、貧乏な人たちの中には自宅の庭や住宅の壁面を広告スペースとして売ろうとする人々が現れるなどの予想外の事態が報告されています。
São Paulo: The City That Said No To Advertising
個人的には、単に広告を撤去すればよいというものではなく、むしろそのクオリティや内容の方を問うべきだろうと思っています。例えばロンドンの地下鉄(Tube)には壁面いっぱいに直貼りされたクールな巨大ポスターがあった方が断然いいと思うし、とにかくカッコよくて人々を楽しませてくれるようなポスターである限りは、公共の利益にそれほど反しないんじゃないかと思います。
とはいえ、デジタルサイネージは家庭のテレビと違ってチャンネルを変えたり電源スイッチを切ることができないわけですから、無理矢理見せられて不快な内容・クオリティであれば広告公害となるでしょう。そういった意味で、公共性というものをこれまで以上に意識せざるを得ないメディアであると言えるのではないでしょうか。
他方、海外では建物の壁面全体がデジタルパネルで構成されたような建築物がすでに登場し始めており、それに関する国際会議なども開かれています。こうした「デジタルサイネージ建築」とでも言うべきものについてはまたあらためて書こうと思いますが、これはデジタルサイネージが単なる看板としてではなく、都市の景観そのものを形作っていく可能性があるということではないかと思います。そうなるとますます公共性というものが重要になってきますね。