日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
Titan Worldwide が向こう36ヶ月以内に 9,000万ドル(約87.3億円)以上の投資を行い、シカゴおよびロンドンを皮切りにバス、鉄道、地下鉄のデジタルサイネージネットワークを展開すると発表しました。
シカゴでは年内に3種類のデジタルサイネージ広告が開始されますが、以前にご紹介した 12フィートのバス車体広告「デジタル・キング」も含まれます。
Titan Worldwide では鉄道のプラットフォームと車内にも 1,200枚のディスプレイを設置して広告やニュース、スポーツ、天気情報、エンターテインメントコンテンツを表示する計画です。
また 2009年初めまでには、HD モニターを両面に備えたアーバンパネルネットワークを地下鉄地上部に展開します。
Titan Worldwide announced that it is to spend $90M over the next 36 months rolling out digital signage networks across its bus, rail and subway portfolio, beginning with Chicago and London.
(Titan To Invest $90M In Digital Signage In Next 18 Months より、一部引用)
欧米では Titan 以外にも CBS Outdoor、JCDecaux、Clear Channel などの巨大メディアがデジタルサイネージの陣取り合戦に突入していますが、従来の広告媒体からデジタルサイネージへと広告費が移動するのはもはや確実と見られており、できるだけ早く投資を実行する以外に選択肢がない状況になっているようです。
交通広告の世界最大手 Titan Worldwide がいよいよ本格的にデジタルサイネージ化に乗り出しました。街中のポスターがデジタルサイネージに置き換えられて行くわけです。
今後3年間に 9,000万ドル(約 90億円)を投じて同社の保有する OOH 広告のデジタル化を進める計画で、まずは交通のハブとなるロケーションを中心に製品のテストを開始しています。
具体的にはロケーションに合わせて以下のようなデジタルサイネージの導入が進められています。
バス車体広告:12フィート(4m弱)の最新 LED パネルと GPS 技術。時間帯、街区、Zip コード、人口統計、人種によって広告ターゲットを分類。2008年末までにシカゴで開始。
プラットフォーム・ディスプレイ:鉄道駅のプラットフォーム広告を大型 HD スクリーンに。シカゴだけでも 1,200面以上になる計画。広告の他、鉄道会社が利用者全員に即座に情報を届けられるようになる。ニュース、スポーツ、天気、エンターテインメントなどのコンテンツも提供予定。
列車内ディスプレイ:GPS 装備の大型 HD ディスプレイを設置して通勤客などに広告やその他の情報を提供。場所と時刻に関連づけられた適切なコンテンツを表示。
街頭の広告パネル:シカゴの地下鉄地上部の広告枠は 2009年初旬にデジタル化。両面 HD スクリーンで時間帯に合わせた広告を表示。
英国内の鉄道駅など:すでに 6 x 4 フィート(約 2 m x 1.3 m)のデジタルディスプレイをロンドン市内に 100枚以上設置したほか、Transvision社と提携して主要17駅に 18面のネットワークを展開中。またロンドンおよびトロントのロードサイドにも大型デジタルパネルを保有。
By the end of 2008, brand new breeds of digital signs will start to change the way brands advertise to consumers and how consumers respond to advertising in the United States, United Kingdom and Ireland. Starting in the key U.S. markets and London (with Ireland and Canada to follow soon) Titan Worldwide will rollout digital signs across its bus, rail and subway portfolio.
With a $90 million investment in digital signage over the next 36 months added to their existing static inventory, Titan’s ambition is to have one of the most seen, flexible and relevant advertising networks in the world.
全米 12,000の病院の待合室をネットワークし、年間1億4,000万人の患者へのリーチを持つアメリカ最大のヘルスケアTVネットワーク AccentHealth がプライベート・エクイティ・ファームに買収されました。
AccentHealth は 1995年から病院を訪れる患者向けの健康関連教育番組を放送しており、Point-of-Care の OOH メディアとして消費者向け製品の広告も流しています。
今回の買収は、デジタル OOH 広告メディアの急拡大を受けて、健康関連広告分野でのポジションを固めるためにネットワークのデジタルサイネージ化を急ぐ狙いがあり、病院の患者というセグメント化された広告媒体としての成長を見越してのものと考えられます。
旧来のマス媒体に変わる広告媒体として、セグメント化されたデジタルサイネージ・ネットワークが本命視されてきているようですね。
さらには、行政が Point-of-Care での教育を重視し始めていることもこの分野への投資の追い風になっているものと思われます。
Private equity firms M/C Venture Partners (M/C) and Banc of America Capital Investors (BACI) today announced that they have partnered to jointly acquire AccentHealth, the leading digital out-of-home media company providing patient health education in physician offices nationwide, from Ascent Media Corp., a subsidiary of Discovery Holding Company.
(M/C Venture Partners and Banc of America Capital Investors Acquire AccentHealth - FOXBusiness.com より、一部引用)
全英にショッピングモール・ネットワークを運営する Vision Media Group が最新型のデジタルサイネージの導入に踏み切りました。クリスマス商戦に備え、10月までにまず100台を設置。広告は Clear Channel Outdoor UK が担い、合計240枚のスクリーンで月間 5,000万人の買い物客にリーチ、年間 370万ポンド(約7億4,300万円)の収益を見込みます。
The unique Iconic Pods, which were designed by VMG’s in-house product development team which has outsourced the manufacturing to a UK-based technology company. The initial fleet of 100 units will be in situ in shopping malls across the UK ahead of the 2008 Christmas period, traditionally one of the biggest spending quarters in the advertising year.
(InvestEgate, Vision Media Group - Launch of Iconic Pods より、一部引用)
最初の100台の購入費用のうち 42万5,000ポンド(約8,500万円)を Trafalgar Capital Specialised Investment Fund が提供。以後の増設費用はこれらのメディアの運営収益から支払われる計画です。
VMG が新たに開発したデジタルサイネージ「Iconic Pods」はくさび形で、大型モニター2面に加え、タッチスクリーン式の情報キオスクを備えます。キオスク画面ではクーポンの発行、店舗への道案内、会員カードの勧誘などを行います。
くさび形の筐体はドイツの街角でも見かけました。こちらは内照式の看板とタッチスクリーンの組み合わせで、片面は周辺の地図になっており、キオスク端末ではインターネットが利用できるようになっていました。
日本にはほとんどありませんが、ヨーロッパでは街なかでインターネットの使える端末をよく見かけます。
フィリピンのスーパーマーケットにもデジタルサイネージが導入されているようです。
東京海上投資管理有限公司(香港)が1億円相当を出資した現地のベンチャー企業 In-store Digital Display International, Inc.(iddi)が設置したものだそうです。
写真を見る限り、結構みなさん見てそうですね。レジ待ちの列が長いほどモニターを見る時間も長くなるのでしょうが、いったん列に並んでしまったら、デジタルサイネージを見てなにか買いたくなったとしても、列から外れて商品を取りに行くには、もう一度並び直すだけの決心が必要かも知れません。
アメリカの事例では、その辺りを考慮して、レジ上のモニターでは商品広告ではなく映画のプロモーションなどを流している例もあります。場所に合ったコンテンツの選択はとても重要ですね。
iddiは昨年6月に営業開始した店内デジタルディスプレー広告会社。資本金は1億2,500万円。書籍・文具大手ナショナル・ブックストアやドラッグス トア「ワトソンズ」、小売り大手ルスタンス傘下のショップワイズ・ハイパーマーケットなどに、計300台のデジタルディスプレーを設置している。
フィリピンにおける、デジタルサイネージのビジネスは、中国に比べて約5年遅れています。しかし、Inside News of the Philippines* の記事にあるように、2006年の経済成長率が5.4%、2007年の経済成長率が31年ぶりに7.3%という高成長を記録するに至り、消費活動も変わりつつあります。
* Inside News of the Philippines
(海外投資公式サイト | フィリピン:In-store Digital Display International, Inc. より、一部引用。脚注は筆者による)
Tube の愛称で親しまれているロンドンの地下鉄で広告媒体のデジタル化が進んでいます。
これは 2006年5月に CBS Outdoor(前 Viacom Outdoor)との間に締結した 8.5年の独占契約に基づくもので、2012年のオリンピック開催を睨んで地下鉄の広告システムに 5,000万ポンドを超える投資を行うプログラムの一環です。
5,000万ポンドというと100億円以上ですが、ロンドン地下鉄には275の駅があるのでこれくらいの金額になるのでしょうか。それにしても途方もない投資額です。
The London Underground contract, the largest of its kind in the world will run for 8.5 years and includes management and maintenance of all advertising locations across London’s Tube network - consisting of 33,000 poster sites at 275 London Underground stations, as well as 88,000 panels inside Tube trains. The Victoria Coach Station contract includes advertising rights at what is the busiest station in the UK.
In what will be a legacy-project for London in the run-up to the 2012 Olympics, Viacom Outdoor will now launch a substantial programme of investment in the Tube environment, enhancing the experience of Londoners on the move and creating a world-class advertising estate.
The investment programme, in excess of £50m, will include a range of new digital technologies, including the roll out of Digital Escalator Panels already at Tottenham Court Road station as well as digital cross-track projection.
その CBS Outdoor が発表した地下鉄駅のイメージ映像がこちら。確かにカッコいいです。
実際、すでにエスカレーター脇のポスター枠のデジタル化が進んでいます。
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=IrjsR6fdGxo]
デジタル化される以前から、ロンドンの地下鉄ではエスカレーター脇にポスターが並んでいました。こんな感じです。
ソニーが、今年3月に発表したデジタルサイネージ配信システム「BEADS(ビーズ)」を使ったデジタルサイネージ広告配信事業を本格的に開始するそうです。少し前から都内のスーパー Olympic の店内で実験的な運用が行われていましたが、これが6月30日から本格稼働します。
株式会社Olympic(以下、Olympic)の展開する首都圏22店舗に大型ディスプレイを151台設置し、「ミルとくチャンネル」と名付けた専用のチャンネルを運営します。「ミルとくチャンネル」は、広告・店舗情報・特売情報・イベント情報などの販促情報に加え、お料理レシピ・地域にあわせた天気予報・ニュースなどの便利な情報を提供します。
現在、スーパーマーケットを利用するお客様の約60%は売り場で購入製品を決定するといわれています。本サービスは、ネットワークを利用した売り場に近い広告メディア(インストアメディア)として、メインターゲットである主婦層・ファミリー層にタイムリーに情報を提供することにより、購買行動に結び付ける効果があります。
BEADS のサービス料金の目安が「同じ建物の中に40インチのディスプレイを100台設置する場合で,初期費用が6500万円程度(ソニー,商業施設などの最大1万台のディスプレイにコンテンツ配信するサービス:ITpro)」とされていることから、数千万円の初期費用がかかるものと思われますが、このほとんどをソニーが負担するサービス形態のようです。
ディスプレイ設置場所の選定、機器の手配/設置、広告の受注、コンテンツの制作 /配信、保守/監視といった関連作業を、すべてソニーグループが請け負う。店舗側は機材を購入する必要がなく、少ない初期投資で導入できるという。
ところで、日本のデジタルサイネージは当初からメーカー主導で進められてきた感があります。プラズマディスプレイを製造する松下電器や日立、液晶ディスプレイを製造するシャープ、ソニー、NECといったメーカーにとっては、薄型テレビに代わる新たなディスプレイ市場としての期待が大きいためです。
液晶パネルの価格が下がり続ける中、メーカー側としては比較的収益性の高い大型ディスプレイを売って行きたいのですが、家庭のリビングでは視聴距離が近いため70インチやそれ以上のサイズに対するニーズは限られます。
一方、ポスターやコルトン(照明入りポスターボックス)などの屋外広告メディアのサイズは60インチ〜150インチ辺りに相当するため、これらをデジタルディスプレイに置き換えて行きたいという考えです。
パネルメーカー各社は、それぞれにデジタルサイネージの配信用ソフトウェアを開発し、これを自社のモニターにくっつけて販売してきましたが、やはりモニターを売るためのデジタルサイネージというスタンスであったように思います。
その点で、今回発表されたソニーのビジネスモデルは新しい路線だと言えるでしょう。
パネルメーカーが費用を負担して広告メディア事業に乗り出す例は海外でも先例がありますが、なかなか採算が取れないという話も聞きます。海外の事例については近いうちに書きたいと思います。