日本初のデジタルサイネージ・コンサルタント、デジタルサイネージ総研(TM)が国内および海外の最新情報や市場の動向をお届けします
デジタルサイネージの事業展開を考えるとき、ほかの情報媒体との差別化という視点は欠かせないでしょう。デジタルサイネージのもたらす便益と同等のものがほかの媒体からでも入手できるとしたら、その価値は大きく減じられてしまいます。
そのような視点から、今回は携帯端末向けのマルチメディア放送サービスを取り上げてみたいと思います。
この分野の動向としては、まず 2006年4月1日にサービスを開始したワンセグの次世代型として、1チャンネルで複数の番組を放送できるマルチワンセグメントサービスや、小出力でエリアを限定して放送するエリア・ワンセグサービスの実験が総務省指定の「ユビキタス特区」などで始まっています。
マルチワンセグメントサービスで考えられるコンテンツを大別すると,「地域情報系コンテンツ」「専門チャンネル系コンテンツ」「ビジネス系コンテンツ」の3つがある。さらにそれらと連携する形で「視聴者参加型コンテンツ」があるという(図1)。
図1●マルチワンセグメント放送で考えられるコンテンツ案
コンテンツは,市街地エリアでのリアルタイム視聴を想定した地域情報やエンタテインメント番組,外国人向け番組などが考えられている。またビジネ ス系では,複数番組を同時に放送できるマルチワンセグサービスの特性を生かして,ニュースや天気予報,株価情報など今まで通信を使って提供することが多 かったコンテンツを放送で提供する。これらに加えて,ダウンロード型の配信,さらにEコマースなどによる課金も想定している。
また、具体的なビジネスモデルの例として、デジタルメディア協会(AMD)の役員企業であるインデックスでプリンシパルを務める寺田眞治氏によれば、
例えば,音楽番組を想定すると,「携帯電話とコンテンツとしての音楽は相性が良いため,音楽専門チャンネルをCDやDVD,コンサート・チケット販 売のポータルとして考えられる」と寺田氏は説明する。具体的には,例えばコンサートのライブ番組のデータ放送部分がポータル・サイトになっていて,番組情 報やそのチャンネルのサイト,ECサイトなどの情報が掲載されているイメージだという。
そうした仕組みを作った上で,「各地域にあるCD/DVDの販売店やレンタル店が放送を使って,自らのビジネスを広げていくビジネス・スキームを 展開してもらいたい。一方,レコード会社や音楽系CS放送事業者などのコンテンツ・ホルダーは,放送料を支払ってチャンネルにコンテンツを提供することが可能になる。つまり,地上波放送に参入できる」(寺田氏)とビジネスの展開を説明した(写真2)。
さらに,地域情報系コンテンツの場合,その地域に特化したイベント情報や映画館情報などの提供が考えられる。例えば,映画会社による地域に密着したシネコンと連携した映画情報番組では,映画情報の提供によるシネコンへの誘導,シネコン入場料のFeliCa決済とクーポン配布による地域店舗への誘導など, シネコンと地域店舗利用の相乗効果に期待が持てる。
などが紹介されています。デジタルサイネージと比較すると、プッシュ型かプル型かという大きな違いはあるものの、提供できるサービスとしては重なる部分もありそうです。
このほか、地上アナログテレビ放送の停波により2011年8月以降「跡地」となる見込みのVHF帯の周波数を活用するタイプのモバイル・マルチメディア放送を巡っても動きが活発化している模様です。現在は日本発の技術と米国発の技術がしのぎを削る状況のようです。
日本の地上デジタル放送方式であるISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)をベースに拡張した「ISDB-Tmm(ISDB-T Mobile Multimedia)」方式と,米クアルコムが開発した「MediaFLO」方式の2つの提案があり,両陣営がしのぎを削る状況
その一方で、早くも携帯端末用の放送サービス向けソフトの発売を開始する事業者も出てきています。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は携帯端末用の放送サービス向けソフト開発を手がける米ラウンドボックス(ニュージャージー州)と販売代理店契約 を結んだ。この提携により、CTCはニュースや天気などの静止画や動画をリアルタイムで配信するソフト群を22日に発売する。
(伊藤忠テクノ、放送サービスソフトで米社と提携:日刊工業新聞 より一部引用)
ニュースや天気などのリアルタイム配信はデジタルサイネージのコンテンツとしてもよくありますよね。数年後には、24時間ニュースだけを放送するニュース専用チャンネルや、天気予報専用チャンネルなどが携帯でも無料で見られるようになるのかも知れません。
デジタルサイネージにしか提供できない便益はいろいろとあるはずなので、そういった部分に的を絞って行くことも必要かも知れません。
マルチメディア放送ビジネスフォーラム が新たに立ち上げたワーキンググループのひとつに「デジタルサイネージWG」というものがあり、ここでは「グーグルを超える広告ビジネスモデルの構築」を目指すそうです。
ラジオやテレビのデジタル放送の電波にコンテンツを乗せて送信するための技術としては、慶大、KDDI、FM東京の3者が共同で開発したもの(デジタル放送波でネットコンテンツを配信する技術 )があり、これの延長線上にあるものと思われます。
以下、3セグ放送推進のマルチメディア放送ビジネスフォーラム,新たに4つのWGを立ち上げ:ITpro より一部引用。
デジタルサイネージWGは,放送波をインフラとするインターネット環境を活用した新規ビジネスの創出を最終的な目標に掲げる。このWGの設立を提案したアイ・ビー・イー・ネット・タイムの関係者は,「グーグルを超える広告ビジネスモデルを構築したい」として,放送波を利用した電子新聞事業など,新たなビジネスの創出を目指すとした。
現在のところ、デジタルサイネージのコスト要因として大きいのは表示用ディスプレイやコンテンツ制作費などではないかと思うのですが、ネットワークインフラが放送波ベースになることでどのような利点が生まれてくるのかは興味深いところです。
とはいえ、今後もディスプレイパネルの価格低下はますます進行すると予測されていますし、もしかしたら電子ペーパーが普及するころのタイミングを睨んだ戦略なのかも知れません。
関連記事:
“逆YouTube”の携帯端末向け「IP over デジタル放送」、福岡で実験開始 - ITmedia +D LifeStyle