2021年 10月 の投稿一覧

「博多通りもん」の秀逸なサイネージ事例を初めて現場で見た

日本における今までのデジタルサイネージのクリエイティブの中でも、最も秀逸なものの一つとして挙げられるものが、2017年の明月堂の「博多通りもん」の福岡空港での事例である。あれから4年が経過しているのだが、今回はじめて現場でそれを現場で見る機会があったので、報告をさせていただこうと思う。

これは福岡空港の国内線ターミナルの、保安検査場入り口に設置されているLCD16面のマルチディスプレイの媒体で掲出される。この媒体は広告媒体なので様々な広告主の広告素材が掲出されている。下の動画では1面しか見えていないが、実際には中央のフライトインフォメーションを挟んで左右に同じものが設置されている。

細かいことだが、素材の前後に黒味が入っている。これは狙ったものなのか、システムのデジタルファイルの読み込み処理が甘いのかはわからない。わからないのだが、個人的には悪くないと感じた。次の素材への転換のメリハリをはっきり感じられるからである。以前はここを詰める技術がないシステム会社が「デジタル動画はこういうものです」と言い張っていものが多かったが、狙いで考えてもいいのではないかという気もした。

話がそれたが、博多通りもんは福岡土産の定番中の定番で、とても美味しいお菓子である。筆者も福岡にでかけたときはほぼ必ずと言っていいほど買っている。この商品の広告コミュニケーションを福岡空港という場所で行うというのは、非常に理にかなっている。ターミナルビル内や検査場の先の制限エリアの売店では、博多通りもんを買える店舗がたくさんある。そこで買い場の直前でワンプッシュというわけだ。そして言うまでもなく、このクリエイティブがこのロケーションに完璧にマッチしている。というよりもこの場所以外では成立しないくらいにマッチしている。この事例は、2017年のデジタルサイネージアワードのグランプリと、第56回福岡広告協会賞の銅賞を受賞している。

デジタルサイネージアワードのグランプリを受賞したときの資料映像を下に貼っておく。これはアワード審査のためのプレゼン用に制作されたものだ。今回感じたことは、実際に現場で見たものと印象がだいぶ違う。現場では音は何もないのだ。また現場で実際に見ると、この広大な空間に対して16面マルチは想像していたほどインパクトを感じない。また2017年なので仕方がないのだが、LCDマルチの「ベゼル」が気になる。

だからといってこの事例の価値が下がるわけでは全くなく、秀逸であることには変わりない。デジタルサイネージは現場が大事ということだけである。

デジタルサイネージ総研 江口 靖二

巨大3D猫こと「新宿東口の猫」で有名なクロス新宿ビジョンがなぜバズッたのか

巨大3D猫で話題の新宿クロスビジョンの一次代理店を担当される株式会社ユニカの藤沼さんにお話をきいてみました。  

(画像提供:株式会社ユニカ)

–新宿クロスビジョンですが話題になりましたが、ユニカビジョンを手掛けるユニカさんはどんな形で新宿クロスビジョンに関わっているのでしょうか?

そもそも、あの土地は長らく空き地でした。それを、ある不動産会社さんが購入したということがスタートになります。
当初の構想として、地下1階を喫茶店、1階2階3階がイベントスペースとして利用される事を想定されていました。立地はとても良いのですが、何分狭いという問題がありました。オーナーさんとしては、ビルをPRして地域のランドマークにしたいという思いがあり、サイネージをつけるという事を検討されたようです。そこで同じ新宿エリアでサイネージを運用している当社に相談があったというところから接点ができたという事になります。
私共としては、街頭ビジョンとしては渋谷が圧倒的な存在感を持っている中で、同じ新宿の仲間として一緒にやっていければという事でお仕事をさせて頂いています。放映・システム回りはマイクロアドデジタルサイネージさんが担当されて、営業・広報は当社が担当するという形になっています。

–3D巨大猫のプロジェクトはどんな経緯ではじまったのでしょうか?

当社のユニカビジョンは「音」が一つの売り物になっています。新宿エリアでの新たなビジョンをイメージした時に何か特徴になるものが
必要になると検討をしていました。一方で数年前から韓国、中国などで湾曲したデジタルサイネージに3D映像を放映する事が話題となって
いました。3Dの映像を放映する際にはビューポイントをどうするかが、問題になるのですが検討すると、出来そうだという事になり、
3D映像を売りにしていこうという事になりました。まずはサンプルになるようなコンテンツを作って、それが話題になれば広告の入稿にも繋がるだろうと考えていました。映像制作に関してはコンペだったのですが、最終的にオムニバスジャパンさんが制作を担当する事になりました。猫のコンテンツもオムニバスジャパンさんの提案のひとつだったというところです。

(画像提供:オムニバスジャパン)
(画像提供:オムニバスジャパン)

放映からバズるまでの流れ


7/1 テスト放映開始

7/2 リリースをすると共に新宿東口の猫アカウントのtwitterアカウントで動画を投稿この段階でプチバスり

7/5 この週からテレビ局の取材が入る

7/7 情報ライブ ミヤネ屋 news every. Live News イット!

7/8 イギリスの首相官邸「ネズミ捕獲長」Larry the Cat(ラリー・ザ・キャット)
のTwitterアカウントが新宿東口の猫について投稿してくれる
1.5万いいね これをきかっけに海外でも話題になる

https://twitter.com/number10cat/status/1412792649711562755
 
ニューヨークタイムズで取り上げられる
https://www.nytimes.com/2021/07/08/world/asia/japan-cat-billboard.html
A Digital Cat Is Melting Hearts (and Napping a Lot) in Japan
デジタル猫が心を溶かす、沢山お昼寝も

7/12 あさチャン!ちゃん めざましテレビ Nスタ などの各社のテレビ番組

–反響については、社内ではどのようにとらえていましたでしょうか?

思ったより早かったですね。元になるものを私共でつくって、企業様とのコラボで反響を上げて、人気が出てくれるといいねという思いでした。それが最初の一発目で、出来てしまったという事ですね。また、ほめて頂いたり、Twitterアカウントにコメントも多く頂きました。そうしたコメントからどういった部分を評価してもらったのか読み解いて、こういった事はやめていこうという事になりました。
そこらへんにいそうな猫がただ巨大化してそこにいるというのが評価してもらっているのかなと。今は、評価されている部分を踏まえて、自然な猫のキャラクターを維持していこうと努めています。猫に歌を歌わせたりや、色を変えたりという
この三毛猫にファンが出来ているので、猫の色を変えたり、歌を歌わせたり、立ち上がって踊りだしたりはしないようにと考えています。

–反響を受けて猫のキャラクターが形作られてきたという事でしょうか?

はい、そうですね。

–広告媒体としての引き合いや反響はどうでしょうか?

今も放映中ですが、ZARDの30周年のサブスク解禁のキャンペーンをさせて頂いています。CMの問い合わせはかなり頂いています。一方で、あのビルに住んでいる看板猫という設定とのコラボの整合性をとるという事を考えています。このビル済んでいる猫として番組で流している時間帯と猫がCMに出演しましたという事の兼ね合いを、評価して頂いているファン層を意識しています。

渋谷ハチ公の対抗軸としての新宿の猫

もともと猫のアイデアが出てきたときから、渋谷のハチ公のように待ち合わせ場所のシンボルにしたいという意向がありました。新宿のアルタ前が待ち合わせ場所の定番じゃないですか。一方で笑っていいともが終わって、若い人にとってアルタ前っていうのがどうなの?という事もあると思うですね。渋谷のハチ公に負けてるよねと。なんで渋谷が若い人を含めて幅広い層から認知を得ているかと考えると、かわいらしい犬と、そこにあるストーリーだと思うんですね。映画化もされたと。か私たちとしては可愛らしい猫はオムニさんに存分につくって頂いたので、ストーリーの部分は媒体側としてつくっていこうと頑張っているところです。
何でも好き勝手にコラボするのではなく、自然な猫のキャラクターを大事にしていこうと考えています。

新宿東口の新たな待ち合わせのシンボルから新たな観光の情報発信の場へ

元々インバウンドが強いエリアなので、コロナが終わった暁には観光の拠点にしたいと考えています。その取り組みの一つが新宿東口の猫のTwitterアカウントで展開する一コママンガです。三毛猫が新宿の観光名所を回っているという立て付けになっています。地域を盛り上げたいという気持ちでやっています。コロナが収束したころには一コママンガもたまっているので、それを冊子にしてビルの地下1階で配布をしようと思っています。地下1階のカフェでドリンクを買って、冊子を持って新宿観光いってらっしゃいという事をイメージしています。このビルに住んでる猫が新宿をうろちょろして歩き回っているというストーリを考えています。

–今後のストーリづくりが新たな価値を生んでいくという事ですね?

そうですね。CMでのコラボも増やしていきたいのですが、それよりもこのビルの前を待ち合わせのスポットとして確立させていけば自然に広告出稿にもつながるのではと思っています。

–それが実現すれば、屋外ビジョンが地域を活性化させる事ができれば本当に良い事ですね。今後はユニカビジョンとのコラボも出てくるという事でしょうか?

はい、放映プランによってはそのような展開もあるかと。猫に関しては大きなコラボを考えてはいないですけど。

–いま、駅前の商業ビルでもテナントが歯抜けになっている状況がありますが、地域を盛り上げる屋外ビジョンというものが生まれれば、他の地域にとっても一つの可能性を示す事にもなりますね。

キャッチなどもいて、新宿モア街のイメージが良くないという状況もあります。歌舞伎町に向けて人通りはものすごくありますが、キャッチが多いので女性は出来るだけ早く通り抜けようとするような場所でもあります。そうした状況を猫のイメージで出来るだけ明るくなればいいなと考えています。弊社としてはこの地域のイメージアップにつながれば不動産の観点からも嬉しい事になります。将来的にはユニカビジョンとの連携であったり、歌舞伎町のミラノ座にもサイネージがつく予定ですので、オール新宿での取り組みなどもイメージしています。アルタさんも含めて、新宿駅近辺のエリアを盛り上げていければいいなと。先に渋谷の再開発が終わって、次は新宿という意識を持っている方も多いです。

新しいビジョンに猫のキャラクターがついた事の先に新宿の活性化に繋がるというお話はとても面白いですね。今日はありがとうございました。

「今日の仕事は楽しみですか。」はコミュニケーションを間違えている

先日JR品川駅のデジタルサイネージに掲出された広告が、いわゆる炎上によってわずか1日で掲出が中止になった。今回はこれについて考察をしておきたい。

炎上したのはこのデジタルサイネージ広告主の社長が、Twitterに投稿した下のツイートである。

サイネージが炎上したというよりは、このツイートが炎上したというのが正確な言い方のようだ。ご存じない方もいるかも知れないので、このデジタルサイネージの設置環境を説明しておく。場所はJR東日本の品川駅。高輪口と港南口を繋いでいる自由通路の左右両側の裏表に70インチのディスプレイが44面設置されている。この通路はどちら方向も非常に人流が多く、特に朝の時間は港南口側のオフィス集積に通勤する人々が、帰宅時はその逆方向に人の流れが集中する。また一日を通じていわゆるサラリーマン層が圧倒的に多く通行する場所である。この通路は「公道」扱いのために、元々通路の両サイドには広告を始めとする掲出物がなく、ディスプレイに表示される映像は非常に目立つ。なお、このデジタルサイネージは然るべき手続き(議会承認まで得ている)を経て設置をされているものだ。また設置位置もかなり高くて若干カーブをしているために、通行人からは一番奥のディスプレイまで見渡すことができる。つまり極めて強制視認性が高い媒体ということになる。なお、ここを通過するためにはおよそ90秒必要である。

このサイネージの媒体社であるJEKIのメディアガイドから。

こうしたロケーションにおいて、週明けの月曜の朝に通勤しようとしたサラリーマン層に向けて、いきなり「今日の仕事は楽しみですか。」というメッセージが白地に黒明朝体で表示されると不快である、ということだ。情報はないが、帰宅時間帯にはひょっとすると「今日の仕事は楽しかったですか。」というメッセージだったのかもしれない。

さて、ここで重要な事実を明らかにしておく。前述のツイートの写真は、コピーだけが切り取られているが、実際にはこの広告素材は15秒の動画なのである。それは下の動画で確認することができる。

このコピーだけが表示されるのではなく、15秒の動画で、かつ他の複数ある広告素材の一つである。また15秒の中身も別のメッセージがあるのがわかる。別のメッセージと言うか文脈全体は時間も短く、文字も小さいので、歩きながらではメッセージの全体像は把握できない可能性があり、不快には感じない、気が付かない人もいたのではないかと思われる。

やはりこの会社の社長がのツイートが独り歩きして炎上した、と見ていいのだろう。このツイートが炎上狙いであったのかはなんとも判断できないが、その後の対応その他を見る感じでは、そうではないような印象を受ける。

デジタルサイネージは時間と場所を特定できるメディアなので、その時その場所にいない人にしか基本的には届かない。そこで最初からSNSでの拡散狙いで行うデジタルサイネージ広告も少なくない。そういう場合は効果の評価軸として「10万RT達成!」のようなことを関係者間で共有していることも多い。今回はそれが見事に逆効果となったわけだ。

炎上狙いではない、とした場合に、この広告のコミュニケーションのコンテキストを考えてみよう。

「今日の仕事は楽しみですか。」→「楽しみなんかじゃねーよ」→「ですよねー。そこで当社のサービスでビジネスに衝動を。ビジネスに感動を。いかがですか?」といったコミュニケーションを想定したのだろう。しかしながら前述の通り、尺と情報量とクリエイティブがきちんとマッチしていないので、通行人とサイネージメディアとの間のコミュニケーションのキャッチボールが成立していないように思う。そしてわずか1日で取り下げてしまい、そのプレスリリースも「取り下げました」と言ってるだけできちんとした趣旨説明はなく、余計にサラリーマン層に喧嘩を売っただけの印象になってしまったのではないだろうか。

この会社さんは2018年に「さよなら、おっさん」でも物議を醸したことは記憶に新しく、社風なのか社長さんのフィロソフィーなのかはわからないが、3年前と良くも悪くも1ミリもブレていないことが見て取れる。結局のところ、この会社のコミュニケーションが今回も「古い価値感(おっさん的価値観)を打破する」という立場なので、「古い価値観」というものの存在を認め、それを仮想敵として設定する必要があるわけだ。これだけでも大変なことであり、そもそもわざわざなぜ好き好んで仮想敵を作らなければいけないのかが不明だったりする。

確かにこのコンテキストに共感する人もたくさんいることは間違いない。しかし少なからざる数の敵をわざわざ可視化してしまう必要はないはずだ。これはデジタルサイネージだからとか、SNSだからという問題ではないこと。真面目に、決して楽しみなんかじゃないけど、普通に仕事そしている人をバカにしたような物言いではなく、いまはみんないっしょに、助け合うという流れだろう。そこを完璧に見誤っていると思うのだ。そもそも仕事が楽しいというのは極めてレアで、仕事よりもっと楽しいことを知らないだけかもしれないわけだ。朝の品川駅でこんなことでいきなり一方的に絡まれても、いい迷惑で大きなお世話ということになるのは致し方ない。

さて、デジタルサイネージの関わる者としては、「本件はデジタルサイネージの強烈な媒体力がこうした結果を招いたわけであり、むしろ好例である」なんてことを一瞬たりとも思ってはならない。ということはだけは間違いないと思うのである。

(デジタルサイネージ総研 江口 靖二)

DSEのEはExpoからExperienceに変わった

主催者の破産、Covid-19などの不運が続いたDSEが、2022年3月にラスベガスで復活する。開催期間は3月21日から24日(展示ホールは22日から24日)に開催される。

オフィシャルサイトはこちらから。

DSEはDigital Signage Expoの略だったのだが、今年からはDigital Signage Experienceにこっそりと変更になっている。言葉遊びっぽい部分もな無くはないが、デジタルサイネージの趣旨や昨今の社会状況を考えれば、モノやサービスを並べて展示しているイメージのExpoよりは、デジタルトランスフォーメーションを体験するExperienceと行ったほうが本来あるべき姿にずっと近づくではないか。

現在セミナーなどの登壇者の募集出展やスポンサーの募集を開始している。また現時点のスケジュールはラフであるがこちらで確認できる。

デジタルサイネージ総研ではアメリカ渡航が可能である限り、現地からのレポートをお届けする予定である。

(デジタルサイネージ総研 江口 靖二)

OAAA、OOHクリエイティブのベスト事例を発表

OAAA(Out of Home Advertising Association of America)は、広告主がOOH(デジタルだけに限らず)を効果的に活用するための「OOH Creative Best Practices」を発表した。このガイドには、OOHのデザインの基本、タイムラインの計画、キャンペーンの始め方と進め方などのヒントが掲載されている。

このガイドでは、広告主がOOHフォーマット用にクリエイティブを最適化するために、フォント、タイプファースト、画像、CTAなどのデザイン要素のヒントを紹介している。また、クリエイティブ・コンセプトを広告掲載前に設定することの重要性についても説明している。

また、全国規模のキャンペーンや、特定の市場、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市圏でのOOH販売者との連携方法も紹介している。そのほか、体験型やSEOなど、他のメディアタイプをOOHキャンペーンに組み込む方法なども含む。

OOH Creative Best Practicesはここからダウンロード可能である。

(デジタルサイネージ総研 江口 靖二)